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2 オレオレ! 婚約破棄詐欺
しおりを挟む「それにしてもオレオレ婚約破棄詐欺、か。うまいこと考えたものね」
用意したケーキを一種類ずつ食べ終えたところで、ようやく自分の中の何かが満足したのでフォークを置いてそう言った。
婚約破棄と言えば、する方にとってもされる方にとっても醜聞だ。
『お金』でなかったことにするとなると、詐欺自体が発覚しない確率も高い。体面を気にする貴族となれば尚更だろう。
何といっても騙された人間は被害者でありながら、架空の婚約破棄騒動では加害者側だ。お金で婚約破棄を撤回してなかったことにしてもらっても、慰謝料を払った側は周囲に言いづらい。
それに、そもそも婚約破棄の事実はないのだから、何事もなく予定通りに結婚したとしても誰も何も不思議には思わない。
騙された人間も、自分がお金を払ったからこそ婚約破棄を回避できたのだ、と思うだけ。
尚且つ、家族がやらかした前科があれば、一度は婚約破棄された(実際にはされていないけど)婚約者に対して、優しくしたり扱いを良くしたりするかもしれない。
そうなればお互いに不満などなく、ますます犯罪自体が発覚しづらくなるだろう。
貴族のプライドや慣習に付け込んだ、非常に悪質な犯罪だと言える。
私も、こうして友人の令嬢から詳しい話を聞かされなければ、前世ではお馴染みのその犯罪の存在にすら気が付かなかったに違いない。
ならば何故、目の前の彼女がソレを知っているのかと言えば――彼女がある意味、一番の被害者であるからだ。
発覚しづらい犯罪。
騙されて金を払った詐欺被害者は婚約破棄騒動(架空)では加害者側であるがゆえに、婚約破棄騒動(架空)被害者の婚約者には文句を言いづらい――とは言っても、どこにでも例外的におかしな人間はいる。
それは、体面を気にするはずの貴族も例外ではない訳で――……。
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