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11 帰国した夫

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「ただいま! アナリーズ、すごく会いたかった!!」

 獣人国から帰ってきた夫は出かける時とは打って変わってご機嫌だった。まるで不在時の分を埋めるかのように、アナリーズにベタベタとくっついてくる。

 獣人の同僚が言っていたように、アナリーズは少し考え過ぎていたのかもしれない。そう思えるほどに夫は元気を取り戻していた


「あ! 今、何を考えていたの? 他の人の事考えていたよね!? アナリーズ、俺がいないあいだ他のオスと仲良くしたりしてないだろうな。そう言えば、何か部屋から俺の匂いが消えているんだけど。……どれどれ?」

「あ、ちょっと。も~」


 そう言って眉間にしわを寄せ、アナリーズに鼻を寄せてスンスンとしつこく匂いを嗅いでくる夫にホッとするも――――少しだけ不安は残る。


 アナリーズに何も言わずに、気まぐれに一カ月も家を空けた夫。何をしに獣人国へ行ったのかを聞いてもはぐらかされるし、彼がどうしてそんな行動を取ったのかは今も分からない。


 それでも、ニコニコと機嫌よくお気に入りのソファーを陣取る様子は以前と何一つ変わっていないし、隣にアナリーズを座らせて機嫌を良くしている夫を見ていると、このままもとの日常が戻ってくるのだと思えてくる。


 優しい夫。甘えん坊な夫。
 ヤキモチ焼きで――アナリーズの全てを囲い込もうとする夫。

 仕事が早く終われば職場まで迎えに来てくれて、健康を考えたアナリーズの手作り弁当を喜んでくれる。
 休みの日にはたとえ自分が仕事で疲れていても、アナリーズをあちこち連れまわして一緒に楽しもうとしてくれる。


 どれもが今までと変わらない。


 ――それなのに。


 微かな違和感がアナリーズの幸せな日常を侵食してくるまでに、そう時間はかからなかった。




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