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21 不穏な微笑み

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「ご……ごめんっ! 息して、息!! ふう……僕の番は目が離せないなあ……キスしていても迂闊に目も閉じられない。……さてと。何だかんだ、君のお母様からは更なるスピードアップをするための許可を貰っているわけだけど? 君も長年、番問題の他に一人娘のプレッシャーに苦しんでいたからね。先に、跡継ぎ問題の解決をしておく?」

 ……と、優しくベットに寝かされて。
 ああそう言えば、と大事な伝言を忘れていたことを思い出す。


「あの……お父様からの伝言で『番ではないのだからラシーヌとは節度を守った付き合いをするように。私は番ではなくとも君の能力と娘への思いは評価をしている。だから決して義父となる私の信頼を裏切るような真似はしないでくれ』……ですって。あと、何かあったら式が遠くなり死期が近づくから覚悟しろって……って、ファンゲン? ちょっとファンゲン大丈夫!?? ヤダ、ヤダ、ファンゲンしっかりしてー!!」


 お父様からの伝言を口にしたら、ファンゲンが私を押し倒したまま、力尽きたようにベッドに突っ伏した。

 何かあったのかと心配したが、ここまできて……とか、今更ここでそんな……とか、ブツブツ言っているのが聞こえたから、意識はあるようだ。良かった。少し重いけど大丈夫そうだ。


「良かった……」

「良くないよ!! ああもう……君の家は本当に家族仲が良いんだね。お母様離れもいいけど、お父様離れもするべきだ。ったく、ここまで来てお預けなんて……まあいいや」


 ニッコリ……。


 突然。あの笑顔で言われてゾワリとした。

 何だろう……お父様からの伝言があるから、その……そういう……変な事にはならないと思うの。

 私も、婚約を結ぶにあたり、その辺のことを少し勉強したのよね。やっぱり……色々あったけど、私もいいお母様になりたいし。


 ニ~ッコリ♡


 そう伝えると、彼の笑顔がますます深くなる。
 どうしよう……耳を見てもしっぽを見ても、まったく何を考えているのか読めないわ。お母様以上に手強いかも。


 そして。


「……ハムッ☆」

「あひゃぅ!??」


 弱い耳にそっと歯を立てられた。




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