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12 お母様への口答えは許しません

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「な……!? 従兄弟のローバスト君がラシーヌの番ですって!? そっ、そんな筈ないわ! 小さい頃からあんなに仲が良かったのに、それが今更、急に実は番だなんてある訳が……」

「そんなの分からないわよ。だって、身体が大人になるまでは誰が番かなんて分からないんだから。でも、ロー兄様には小さい頃からすっごく可愛がってもらっていたのをお母様だって、知っているでしょう? ……それに、最近まで知らなかったのだけど、私とロー兄様が番なのではないかって噂があったのですって! ファンゲンもだからこそ身を引いてくれたのよ? 本物の番で、騎士団に所属する彼を敵に回したくないからって」

「そんな……じゃあ、本当に?」

「分からないけれど、少なくともファンゲンだけは違うもの! そうなってくるとロー兄様が一番有力なんじゃないかしら? もしかしたら、この『予感』を勘違いしちゃったのかもしれないわ。ううん、きっとそう! ありがとうお母様! お母様が別れろって言ってくれたから、誰ともお付き合いしていない、キレイな状態で番と出会えるわ! 私とファンゲンは婚約もしていなかったから経歴すら汚れることは無かったし、それもこれも全部お母様のお陰……「中止よ」」

「……え?」

「考えてみたら従兄弟のローバスト君も騎士団のお仕事が忙しいでしょうし、今回は見送りましょう」

「そんな!! お母様が言い出したのよ!? 私、ロー兄様と結婚……じゃなかった、お会いするの楽しみにしていたのに」

「それに、ほら。やっぱり成人したての貴女がお付き合いをするのなら、もっと年齢が近い方がいいんじゃないかとお母様は思うの……そうだ、番じゃないのならもう一度ファンゲン君とお付き合いをしたらどうかしら?」

「え~…。でも、お母様に言われて別れたばかりなのに言いづらいわ」

「大丈夫、お母様が言ってあげるわ。そうよ、アナタ達も成人したのだから、これを機会に今度こそ正式にファンゲン君と婚約を結んだらどうかしら?」

「でも番じゃない相手と婚約なんてしたら……」

「言ったでしょう? 番が本気だったら、たとえラシーヌが結婚していてもお父様みたいに、相手から奪ってでも結ばれようとするはずよ。だから、ラシーヌは番ではないファンゲン君と婚約すればいいの。ラシーヌはお母様とお父様に憧れているのでしょう? お母様とお父様みたいに幸せになりたいのでしょう? 見ての通りお母様は幸せよ? 幸せな結婚生活を送っていたけれど、番が現れて、貴女のお父様が現れて、もっともっと幸せになったの。結婚した後に番と出会って、それで誰よりも幸せになったのよ? お母様は貴女の為を思って言っているの。貴女はただお母様の言うことを聞いていればいいの。……これ以上の口答えは許さないわ。貴女はファンゲン君と婚約して大人しく結婚するの。い・い・わ・ね!?」

「…………はい」




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