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11 お母様が別れろって言ったから
しおりを挟む「ラシーヌ。貴女、言われた通りファンゲン君とはお別れしたんでしょうね?」
それから約一か月後。
学園から帰宅すると、口元だけ笑顔を作ったお母様が言ってきた。
「あ、うん。もうとっくよ? 彼にはお母様に言われた後すぐに伝えたから、もう別れてから一カ月くらいはたつかしら?」
「……本当に別れたの? その割にはショックを受けた様子がないようだけど。まさか、別れたふりをしてこっそり会っていたりするんじゃないでしょうね?」
「まさか! しっかり話し合って別れたからってだけよ。確かにお母様に言われた時にはショックだったけど、私、少し考え方を変えたの。私も、もう成人だもの。いつ本物の番と出会うか分からないし、そろそろ番を悲しませるようなお付き合いは避けるべきだって」
「何を言っているの? ファンゲン君がラシーヌの番だったのよね? 貴女がそう言ったんじゃない」
「ええ、そう思ったんだけど……違ったみたい。それに、私は番『かもしれない』って言っただけよ? だいたい、本当の番だったらこんなにアッサリ別れられるはずがないじゃない。お父様を見ていれば分かるでしょ? それに、彼は最初から私は違うと思っていんですって。そんなこともあって、彼も最初は別れるのを嫌がっていたけれど、最終的には同意してくれたわ」
お母様が別れろって言ったのに変なお母様……と首を傾げると、お母様は慌てて見合い用らしき写真を手渡してきた。
そして、そこには騎士団の制服を着た……私もよく知るある人の姿が写っていた。
「…ま、まあいいわ。それでね、貴女がお付き合いする方なのだけど、お母様、次は従兄弟のローバスト君がいいと思うの。先方に話をしたらあちらもかなり乗り気で、今週末に来てくれるそうよ」
「まあ、本当に!?」
「え……ええ。彼も小さい頃から貴女と遊んでいたし、流石に彼は『違う』でしょうから」
「お会いするの久しぶりだわ! 頑張ってオシャレしなくちゃ! ありがとう、お母様」
「……随分と嬉しそうね?」
「当り前じゃない、大好きなローに……ロー兄様に会えるのよ? それに私、何となくロー兄様が私の番なんじゃないかって気がしていたのよね」
私はローの写真を胸に抱きかかえると、その場でくるくる回った。
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