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しおりを挟む「あ……あの、ファンゲン?」
「あのさ、人がせっかく最短で上手くいくように理性総動員して策を弄しているのにそんな格好でこんな時間に人のテリトリー来て、よくもまあ無邪気にそんなこっちを煽るようなこと言えるよね?」
ずしり。布団の上に乗り上げてきた彼の体重でベッドが軋む。
彼の部屋の、寝心地の良い柔らかなベッドの上で貰ったバスタオルにくるまって、涙ながらに今後の方針を相談していただけの筈なのだが……。幼い頃を思い出させる前髪の隙間から、当時はなかった成人したオスの本能を孕んだ目が見えて、思わずじりじりと後ずさる。
――が、当然彼の一人用ベッドにそこまでの広さはなく、あっという間に壁へと追い詰められてしまった。
「あ…あお、あお、煽るってべべ、別に……」
「『恋人役』僕じゃなかったら、一体誰に頼むつもりだったのかな?」
ニッコリ……目を逸らすことなく口元だけで笑う幼馴染のその顔に、思わずブルリと体が震える。
「ほら、言って? ラシーヌ、聞こえないよ?」
「い……従兄弟のローバスト…ぁひゃうっ」
耳元で。吐息を感じる距離で促され仕方なく口にしたら、夜の逢瀬で囁くように交わされる相手の声を拾う為に、やたらと敏感になってしまっている耳を突然噛まれた。
噛まれた場所を中心に熱を持つ。
恥ずかしくて痛くて嬉しくて――――身体が熱くて。
こんな風にじゃれ合うくらいの事は子供の頃からいくらでもしていたのに。今回に限っては何故だか急に訳が分からなくなり、とうとう限界が来てしまった。
きっと今日は色々なことがありすぎたのだ。
自分から交際を薦めてきたくせに、番だと分かった途端、ファンゲンとの仲をお母様から反対されて。
ファンゲンに会って、大丈夫と言われてようやく落ち着いたと思ったら急に――これだ。
安心した途端に身の危険を感じさせられて、もう訳が分からない。
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