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2 全ての始まり
しおりを挟む人間のお母様と狼獣人のお父様。種族は違うけれど二人は番。
お母様が大好きで大好きで仕方がないお父様はお母様をでろでろに甘やかしているし、そんなお父様に愛されているお母様も幸せそうだ。両親は歳をとっても昔と変わらず仲が良い。
だから二人の間に産まれた私は当然のように番という存在に憧れを持っていた。
けれど、そんな両親だけど最初から二人は夫婦だったわけじゃない。人間の平民だったお母様には当時既にご主人と子供が居て、後から知り合ったお父様が猛アプローチを仕掛けてお母様を奪ったのだ。
「お母様はお父様からそこまでして望まれたの。貴女も、いつかそんな風に愛してくれるお相手が見つかるわ」
お母様からまるで惚気るように何度も何度もその話を聞かされたけど、私はどうしてもその辺りの話には興味を持てなかった。
だって。お父様は当時のことを気にしているし、お母様は私にはそうやって話してくれるけど、両親の間では不思議なくらいそのあたりの話題が避けられている。
だから、私は自分が大人になって番との婚姻をちゃんと諦めるまでは特別な相手を作らない――お母様にそう言ったら、全ての表情をなくしたような目を向けられた。
一瞬だけだったけれど、それが酷く怖かったのを覚えている
それからは、「私に恋はまだ早いかな!」なんて遠回しに自分の考えを言うようにしていたのだけれど。
思えばあのあたりからお母様はやたら私に異性との交際を勧めてくるようになったのだ。
仲の良かった幼馴染との縁を取り持つようなことを言ってくるようになったのもその延長線上で起こったこと。
親同士の仲が良く、親戚以外で唯一交流のある男の子だったから。
……だから、私は。
我が家は侯爵家。幼馴染の家は伯爵家だけどウチよりも裕福。得意分野が違うから仕事上のうまみもあるし、まったく両家の釣り合いが取れない訳じゃない。
それに貴族だから番であろうとなかろうと、どっちも将来的には時が来たら婚姻相手を選ぶ必要が出てくる。
まあ、強い子が産まれるとされているから番であればそちらが優先されるものだけど。番というだけで歓迎されるのだ。
家柄など関係なしに、獣人ならばどこの家でもそう。
付き合っている二人が番だったならこれほどめでたいことは無い。すぐに両家で話を進めてもおかしくないくらいの出来事だ。
それなのに、お母様はいったいどうして……?
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