【完結】キャラ弁の精度が高すぎて異世界召喚された俺

堀 和三盆

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1 魔法陣弁当で異世界召喚された俺

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 校舎裏のベンチが俺の指定席だった。

 園芸部が管理している小さな花壇の脇にある古いベンチ。この場所で俺は毎日昼食を摂っている。春先なら心地いいだろうここも、寒風吹きすさぶ冬の今、愛でる花もなく寒いだけ。

 それでも厄介な連中に絡まれることなく食事を摂れるだけで天国だ。寒いし、手はかじかむけど。

 そう。俺はいじめに遭っている。教科書は隠されるし、陰口は隠されないし、体だって痣だらけ。

 本当は登校したくない。でも、将来を考えれば学校を休むことはできないし、親にも相談していない。でも、母親はうすうす何か感づいているのだろうと思う。

 その証拠が、この弁当。

 お友達と楽しくお昼を過ごせるように。その願いを込められて作られたであろう凝った作りの見事なキャラ弁。それが途絶えたことはない。

 しかしぼっち属性が強い俺は、高校に入学してからずっと一人でソレを食べ続けた。
 ……コレもギャラリーが俺だけでは労力の無駄だろうに。


(今日は何だろう)

 かじかむ手で弁当箱のふたを開ければ、海苔で作られた見事な魔法陣。コレには見覚えがある。つい先日古本屋で買ったファンタジ―雑誌に載っていた願いが叶う魔法陣だ。

 居間に置きっぱなしにしていたから、それを参考にしたのだろう。凝り性な母親らしく細部にまでこだわった再現度が凄まじい。『今日も一日楽しく過ごせますように』そう言って、渡されたお弁当。その願いが叶うのは難しいだろう。

 いじめっ子が居る教室。
 見て見ぬふりの担任教師。
 荒れた学校。


 逃げ場のないこんな状況では、楽しくなんて過ごせない。異世界にでも行かない限り、願いなんか叶わないよ――。


 そんな風に思った瞬間。俺は見知らぬ場所にいた。

 雑踏。ファンタジー感あふれる街並み。縫製の少々雑な服を着た人達。そこに、学生服姿の俺がいる。


 何が起こったのか。ここはどこなのか。
 考える俺の頭の中に答えが響いた。


『やっほぅ。俺、神様。魔法陣の精度が高いから感心してつい声かけちゃった。君の願いを叶えてあげたんだから、お礼に俺の頼みも聞いてくれるよね。そうだな、せっかくだからこの世界の魔王討伐をお願いしちゃおうかな☆ 成功報酬として、君の持っていた母親特製の魔法陣弁当を進呈しちゃうよ! 状態保存かけておくから安心してね☆ じゃ!』

「ちょ、待てよ! ざけんな、元の場所に……」


 その叫びには、もう答えは帰ってこなかった。




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