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28 高位の魔法使いの本気
しおりを挟む一時の感情で伴侶が決まってしまった義妹は、自分の好みとは真逆の男性と婚姻してしまったことに首を傾げていたが、ドリット様は子煩悩だし、義妹の才能には心底ほれ込んでいるので、何だかんだ大事にされて幸せにやっているみたいだ。
家を出た後も、こうして孫を連れて夫婦でお父様とお義母様に会いに来てくれている。
一方の私達は出身国の違いや身分、諸々の問題から婚約を結ぶまでに時間がかかったのと、結婚と同時に私が伯爵家の爵位を継いだため、仕事に慣れるまでは……と忙しくしていた為にまだ子供はいない。
「お嬢様ー! お嬢様ー! うう…お願いですから出てきてくださぁ~い!!」
すぐ近くで大きな声がした。そちらに目をやると姪っ子の乳母が泣きそうな顔をしてお邪魔虫ちゃんを探している。そっと姪っ子を東屋の外へ出してやると、乳母がすぐに駆けよって彼女を連れて行った。
振り返って私達に大きく手を振る姪っ子を見て乳母が不思議そうに首を傾げているので、やはり大人には認識阻害の効果があるようだ。
笑顔で手を振り返して隣を見ると、邪魔をされた高位の魔法使いが無表情に磨きをかけていた。
本気で姪っ子の『じゅるい』を魔法で言えなくされても困るので、しっかりとフォローをする。
「ふふふ……邪魔されちゃったけど、可愛い姪っ子を抱っこしたら義妹が羨ましくなっちゃった。義妹ばかりずるい、私達もそろそろ……」
言い終わる前に。魔法で寝室へと拉致された。寝室にはしっかりと認識阻害の魔法をかけて。
まぁ、その後のことは何というか……。
すごい、というか。
こんなの初めて、というか……。
私としてはお邪魔虫の突入が心配だったが、今度こそ本気の認識阻害を発動したらしく、朝まで誰にも邪魔をされることは無かった。
今日は流石に休まないとダメかもしれない。――が、とりあえず高位の魔法使いの無表情が完全に剥がれるくらい機嫌が回復したので、彼の腕の中で私も幸せをかみしめることが出来た。かなりお疲れ気味ではあったが彼も幸せそうだ。
そして。
……それからきっちり。十カ月もしない間に、新たな幸せが誕生したのは本気で『すごい』――と思った。
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