【完結】何でも欲しがる義妹が『ずるい』とうるさいので魔法で言えないようにしてみた

堀 和三盆

文字の大きさ
上 下
27 / 28

27 お邪魔虫の正体

しおりを挟む

 お気に入りの東屋に義妹そっくりな幼児が現れた。

 悔しそうにギュッと手を握り締め。
 両腕を上下にブンブンと振り回しながら、

「じゅるい、じゅるい」

 ……と、繰り返している。

 あれ? おかしいな。執務室と同じで、ここも認識阻害がかけられていたはずなのだが――と、慌てて身を離し、高位の魔法使いに確認してみると。


「……残念ながら、自我が未発達で操れない子供は精神に干渉する魔法が効きづらい。――が、魔法ではじき飛ばすことは可能だし、結構な魔力を使い本気で認識阻害をかければどうにかなる。それに、今まで通り言葉を封じるくらいなら簡単にできる」


『じゅるい』に二人の時間を邪魔されたのがよほど面白くなかったのだろう。高位の魔法使いは無表情でそんな恐ろしいことを言ってきた。いや、こんな子供にそれは駄目でしょう。可哀想すぎる。

 何度も自分から彼に依頼して、義妹に魔法をかけまくっておいてなんだけど――子供には罪はない。
 というか、このくらいの子供ならばまだ間に合う。

 高位の魔法使いを何とかなだめすかして、小さなお邪魔虫ちゃんに優しく話しかける。


「ずるくはないわ。おば様はキチンとお仕事をしたから、ご褒美におやつをもらえたのよ。貴女もおやつが欲しいなら、お仕事しなきゃ。貴女くらいの年齢なら常識を身に付けるのがお仕事だから――そうね、お手手を奇麗に洗ってこられるかしら?」

「はい!」


 素直に東屋に設置してある水道で手を洗い、私の膝の上でもらった焼き菓子を頬張る姪っ子の可愛いこと可愛いこと。よくできましたと頭を撫でると子供は顔をあげてニッコリと微笑んだ。
 義妹似の保護欲を誘う愛らしい顔に、公爵家特有の銀色の髪がサラサラとかかる。


 彼女は私に求婚していた公爵家三男のドリット様と義妹の娘。血は繋がっていないが私にとっては可愛い姪っ子だ。
 親子三人で別の場所に住んでいるが、実家に遊びに来ると両親に先ぶれがきていたのでおそらくはぐれたのだろう。


 王太子殿下が絡んできたあの時。私が正式に高位の魔法使いを選んだことでドリット様は少々荒れた。それを見た義妹は即食いついた。

 ダメ男感知機能を持っている義妹のことだからソレが反応したのだろうけれど、元々真面目なドリット様のこと。すぐにご自分を取り戻し、しっかりと責任を取って義妹を引き取ってくれた。現在は公爵家が持つ伯爵の爵位を引き継ぎながら、立ち上げた大手出版商会の経営に勤しんでいる。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげますよ。私は疲れたので、やめさせてもらいます。

木山楽斗
恋愛
聖女であるシャルリナ・ラーファンは、その激務に嫌気が差していた。 朝早く起きて、日中必死に働いして、夜遅くに眠る。そんな大変な生活に、彼女は耐えられくなっていたのだ。 そんな彼女の元に、フェルムーナ・エルキアードという令嬢が訪ねて来た。彼女は、聖女になりたくて仕方ないらしい。 「そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげると言っているんです」 「なっ……正気ですか?」 「正気ですよ」 最初は懐疑的だったフェルムーナを何とか説得して、シャルリナは無事に聖女をやめることができた。 こうして、自由の身になったシャルリナは、穏やかな生活を謳歌するのだった。 ※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。 ※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。

冤罪を受けたため、隣国へ亡命します

しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」 呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。 「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」 突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。 友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。 冤罪を晴らすため、奮闘していく。 同名主人公にて様々な話を書いています。 立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。 サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。 変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。 ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます! 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

氷の姫は戦場の悪魔に恋をする。

米田薫
恋愛
皇女エマはその美しさと誰にもなびかない性格で「氷の姫」として恐れられていた。そんなエマに異母兄のニカはある命令を下す。それは戦場の悪魔として恐れられる天才将軍ゼンの世話係をしろというものである。そしてエマとゼンは互いの生き方に共感し次第に恋に落ちていくのだった。 孤高だが実は激情を秘めているエマと圧倒的な才能の裏に繊細さを隠すゼンとの甘々な恋物語です。一日2章ずつ更新していく予定です。

治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~

百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!? 男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!? ※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。

婚約者のことが大大大好きな残念令息と知らんふりを決め込むことにした令嬢

綴つづか
恋愛
――私の婚約者は完璧だ。 伯爵令嬢ステラリアの婚約者は、将来の宰相として期待されている筆頭侯爵令息のレイルだ。冷静で大人びていて文武にも長け、氷の貴公子などと呼ばれている完璧な男性。 でも、幼い頃から感情と表情が読み取りづらいのレイルの態度は、婚約者として可もなく不可もなく、ステラリアはどこか壁を感じていた。政略なこともあるが、引く手あまたな彼が、どうして平凡な伯爵令嬢でしかないステラリアと婚約を結び続けているのか、不思議で不安だった。 だが、そんなある日、偶然にもステラリアは見てしまった。 レイルが自室でベッドローリングをしながら、ステラリアへの愛を叫んでいる瞬間を。 婚約者のことが大好き過ぎるのに表情筋が動かな過ぎて色々誤解をされていた実は残念な侯爵令息と、残念な事実を知ったうえで知らんふりをすることにした伯爵令嬢のラブコメです。 ヒーローとヒロインのどちらかの視点で基本お話が進みますが、時々別キャラ視点も入ります。 ※なろうさんにも掲載しています。

【完結】なぜ、お前じゃなくて義妹なんだ!と言われたので

yanako
恋愛
なぜ、お前じゃなくて義妹なんだ!と言われたので

あなたのためなら

天海月
恋愛
エルランド国の王であるセルヴィスは、禁忌魔術を使って偽の番を騙った女レクシアと婚約したが、嘘は露見し婚約破棄後に彼女は処刑となった。 その後、セルヴィスの真の番だという侯爵令嬢アメリアが現れ、二人は婚姻を結んだ。 アメリアは心からセルヴィスを愛し、彼からの愛を求めた。 しかし、今のセルヴィスは彼女に愛を返すことが出来なくなっていた。 理由も分からないアメリアは、セルヴィスが愛してくれないのは自分の行いが悪いからに違いないと自らを責めはじめ、次第に歯車が狂っていく。 全ては偽の番に過度のショックを受けたセルヴィスが、衝動的に行ってしまった或ることが原因だった・・・。

処理中です...