【完結】何でも欲しがる義妹が『ずるい』とうるさいので魔法で言えないようにしてみた

堀 和三盆

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25 元気の出る焼き菓子

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 遠く、離れた国からお嫁に来た私のお母様。
 母国で大好きだったお菓子を娘に食べさせたくても、現物を知っているのはお母様だけなので自分で作るしかなかった。

 一応あちらで料理人からレシピは聞いてきたらしいけれど、高位貴族だったお母様がお料理上手……とはいかず。

 毎回焦げたり。
 形が変だったり。

 焦げた場所を切り落としてどうにか大丈夫そうな所だけを食べるのだけれど、当時の私はそれも含めて……嬉しくて嬉しくて。

 病気で食欲がない時に食べたい物はないかと聞かれると、私は必ずソレをリクエストしていたのだ。やっぱり毎回失敗してお母様は落ち込んでいたけれど、私は必ず「美味しい」と言っていた。

 だけど、本当はちょっぴり苦かったり……正直まずかったり。

 お母様亡き後、何度も同じものを再現しようとしたけれど、何しろ小さい頃の記憶だし、食べた記憶のみで材料も分からず……では、正直再現度が微妙だった。
 まぁ、そのうちどうにか食べられるくらいにはなったけど。おかげで私は貴族令嬢ながら料理がそれなりにできる。

 それを高位の魔法使いに話したことがあったのだが――彼はそれを覚えていたらしく、先日、あちらへ荷物を取りに帰った時に、焼き菓子の正しい作り方を調べて来てくれたのだ。

 さっそく昨日の休憩時間にそれを忠実に再現したのだが一日寝かせなきゃいけないとのことで、今日まで食べるのがお預けになっていた。


 初めて挑戦するレシピで成功するかは分からなかったけれど。私はどうしてもあの焼き菓子を作りたかったのだ。


 ……最近、少し彼の元気がなかったようだから。




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