【完結】何でも欲しがる義妹が『ずるい』とうるさいので魔法で言えないようにしてみた

堀 和三盆

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16 一難去って

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「先日は大変でしたね。大変興味深いお話が聞けたと伯母上…王妃陛下も喜んでおられましたよ。ああ、これ差し入れです。ここのクッキーがお好きだと義妹さんからお聞きしましたので」


 王妃陛下主催のお茶会から数日後。公爵令息様が屋敷に来られた。ごく自然に出された紅茶に口を付ける公爵令息様。肩口で切りそろえられた銀色のサラサラ髪が、少し動くたびに美しいお顔にかかりキラキラとしている。


 流石は公爵令息様。物腰も柔らかで優雅だ。
 お出ししている紅茶には来客用の高級な茶葉を使用しているが公爵家で飲んでいる物には叶わない(いつもお買い上げありがとうございます)。なのに、彼が優雅に飲んでいるだけで、王宮で出されたのと同じ超超高級品に見えてくるから不思議だ(王宮御用達の看板ありがとうございます)。

 本来こういった方があのような豪華なお茶会には招かれるべきなのだろう。すぐに気疲れしてしまう私などとは違い、スッとその場に溶け込んで普段と変わらぬ微笑で会話を楽しみそうだ。


 本日の御来訪は事前にお手紙をいただいているので把握済み。今日は義妹と新作本の打ち合わせがあるそうだ。

 お父様は商会の方のお仕事で留守にしているので、応接間にて当主代理としてご挨拶をし、義妹が来るまでの間対応させていただいている――のだが。

 義妹を呼びに行かせた使用人からそっと耳打ちをされて。その報告内容に気が遠くなる。


「王妃陛下にはせっかく呼んでいただいたのに、本当に大したお話は出来なくて。あの、お気遣いありがとうございます。ここのクッキー大好きなので嬉しいです。ええ~と。それで、ですね、その……公爵令息様。申し訳ございません! お約束をいただいていたのに、義妹が急用で出てしまったらしく」

「公爵令息様などと、そんな他人行儀な。義妹さんを通じてとはいえ、僕たちも長い付き合いでしょう? どうか、僕のことは気楽にドリットと呼んでください。それに、義妹さんのことならお気になさらずとも大丈夫ですよ。仕事上慣れていますから。…………どちらかというと僕の今日の本命は貴女で…」

「他人行儀も何も、貴様は他人だろうが。近い、彼女から離れろ」

 ぺチン。いい音で。私に伸ばされた公爵令息様の手が払われた。

「また、君か」




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