上 下
7 / 28

7 転機

しおりを挟む

 正直ビックリした。

 これについては多少ガッカリもしたが――そもそもあのペンダントは義妹に奪われることを念頭に置いて用意した物だ。私の商品選択が完璧だっただけで、実際に奪われたところで何も問題はない。

 義妹もペンダントをかなり気に入ったらしく、いつもより私へのお披露目の回転数も多かった。少し高かったがきっと大事にするだろう。そう思うしかない。


 それに――よく考えてみれば、少しの間とはいえ狙い通りの効果はあったのだ。この方法の有効性は間違いないとみていいだろう。効果が確認できただけでも十分に収穫があったと言える。

 さすがは高位の魔法使い。仕事ぶりが素晴らしい。


 そう思った私は再びお母様の母国にいる高位の魔法使いに連絡をとって、今度は義妹が『不平等』と言えないように魔法をかけてもらうことにした。



「不公平ですわ、不公平ですわ、お義姉様ばかり! 私も伯爵家の人間になったのだから、そんな素敵なイヤリングが欲しいです!」

「贔屓ですわ、贔屓ですわ、お義姉様ばかり! 私も伯爵家の人間になったのだから、そんな素敵な日傘が欲しいです!」

「差別ですわ、差別ですわ、お義姉様ばかり! 私も伯爵家の人間になったのだから、そんな素敵なソファーが欲しいです!」


 ところが義妹はしぶとかった。

 私は何かを奪われる度に高位の魔法使いに連絡を取って原因となった義妹の言葉を封じて貰っていたのだが、義妹はその都度封じられた言葉を次々に別の表現に言い換えて、サクサクサクっと自らの欲しい物を奪っていったのだ。

 いくら封じてもキリがない。
 そして思った。


 もしかして。
 うちの義妹は天才なのではないか――――と。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《完結》国を追放された【聖女】は、隣国で天才【錬金術師】として暮らしていくようです

黄舞
恋愛
 精霊に愛された少女は聖女として崇められる。私の住む国で古くからある習わしだ。  驚いたことに私も聖女だと、村の皆の期待を背に王都マーベラに迎えられた。  それなのに……。 「この者が聖女なはずはない! 穢らわしい!」  私よりも何年も前から聖女として称えられているローザ様の一言で、私は国を追放されることになってしまった。 「もし良かったら同行してくれないか?」  隣国に向かう途中で命を救ったやり手の商人アベルに色々と助けてもらうことに。  その隣国では精霊の力を利用する技術を使う者は【錬金術師】と呼ばれていて……。  第五元素エーテルの精霊に愛された私は、生まれた国を追放されたけれど、隣国で天才錬金術師として暮らしていくようです!!  この物語は、国を追放された聖女と、助けたやり手商人との恋愛話です。  追放ものなので、最初の方で3話毎にざまぁ描写があります。  薬の効果を示すためにたまに人が怪我をしますがグロ描写はありません。  作者が化学好きなので、少し趣味が出ますがファンタジー風味を壊すことは無いように気を使っています。 他サイトでも投稿しています。

【完結】小説の世界に転生したが、そこは似て非なる現実の世界だった

金峯蓮華
恋愛
ここが、妹が読んでいた小説の世界だと気がついた。だがしかし、そこはあまりにも似て非なる世界だった。一緒に亡くなっているとしたら妹もここに転生しているはず、さて、誰に転生しているのだろうか?俺は俺なりにこの世界で楽しむとするか? 以前連載していた「『真実の愛』を上書きします」を書き直したものです。 ご都合主義です。 作者の妄想の中の異世界でのお話です。

【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」

まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05 仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。 私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。 王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。 冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。 本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

虐げられた令嬢が愛されるまで

八代奏多
恋愛
 伯爵令嬢のリーシャは家族から忌み子と呼ばれ虐げられていた。  妹が流した噂のせいで学院でも白い目で見られていて、せめて結婚したら幸せになりたいと思っていた。  しかし、父の借金を帳消しにするためにと、女殺しで有名な父より年上の公爵と結婚させられることに。  それでもリーシャを好いている人はいて……。  そんな彼女が愛され幸せを掴むまでの物語。 ※小説家になろう様でも投稿しております。

逆ハーレムを完成させた男爵令嬢は死ぬまで皆に可愛がられる(※ただし本人が幸せかは不明である)

ラララキヲ
恋愛
 平民生まれだが父が男爵だったので母親が死んでから男爵家に迎え入れられたメロディーは、男爵令嬢として貴族の通う学園へと入学した。  そこでメロディーは第一王子とその側近候補の令息三人と出会う。4人には婚約者が居たが、4人全員がメロディーを可愛がってくれて、メロディーもそれを喜んだ。  メロディーは4人の男性を同時に愛した。そしてその4人の男性からも同じ様に愛された。  しかし相手には婚約者が居る。この関係は卒業までだと悲しむメロディーに男たちは寄り添い「大丈夫だ」と言ってくれる。  そして学園の卒業式。  第一王子たちは自分の婚約者に婚約破棄を突き付ける。  そしてメロディーは愛する4人の男たちに愛されて……── ※話全体通して『ざまぁ』の話です(笑) ※乙女ゲームの様な世界観ですが転生者はいません。 ※性行為を仄めかす表現があります(が、行為そのものの表現はありません) ※バイセクシャルが居るので醸(カモ)されるのも嫌な方は注意。  ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げてます。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【宮廷魔法士のやり直し!】~王宮を追放された天才魔法士は山奥の村の変な野菜娘に拾われたので新たな人生を『なんでも屋』で謳歌したい!~

夕姫
ファンタジー
【私。この『なんでも屋』で高級ラディッシュになります(?)】 「今日であなたはクビです。今までフローレンス王宮の宮廷魔法士としてお勤めご苦労様でした。」 アイリーン=アドネスは宮廷魔法士を束ねている筆頭魔法士のシャーロット=マリーゴールド女史にそう言われる。 理由は国の禁書庫の古代文献を持ち出したという。そんな嘘をエレイナとアストンという2人の貴族出身の宮廷魔法士に告げ口される。この2人は平民出身で王立学院を首席で卒業、そしてフローレンス王国の第一王女クリスティーナの親友という存在のアイリーンのことをよく思っていなかった。 もちろん周りの同僚の魔法士たちも平民出身の魔法士などいても邪魔にしかならない、誰もアイリーンを助けてくれない。 自分は何もしてない、しかも突然辞めろと言われ、挙句の果てにはエレイナに平手で殴られる始末。 王国を追放され、すべてを失ったアイリーンは途方に暮れあてもなく歩いていると森の中へ。そこで悔しさから下を向き泣いていると 「どうしたのお姉さん?そんな収穫3日後のラディッシュみたいな顔しちゃって?」 オレンジ色の髪のおさげの少女エイミーと出会う。彼女は自分の仕事にアイリーンを雇ってあげるといい、山奥の農村ピースフルに連れていく。そのエイミーの仕事とは「なんでも屋」だと言うのだが…… アイリーンは新規一転、自分の魔法能力を使い、エイミーや仲間と共にこの山奥の農村ピースフルの「なんでも屋」で働くことになる。 そして今日も大きなあの声が聞こえる。 「いらっしゃいませ!なんでも屋へようこそ!」 と

公爵令嬢姉妹の対照的な日々 【完結】

あくの
恋愛
 女性が高等教育を受ける機会のないこの国においてバイユ公爵令嬢ヴィクトリアは父親と交渉する。  3年間、高等学校にいる間、男装をして過ごしそれが他の生徒にバレなければ大学にも男装で行かせてくれ、と。  それを鼻で笑われ一蹴され、鬱々としていたところに状況が変わる出来事が。婚約者の第二王子がゆるふわピンクな妹、サラに乗り換えたのだ。 毎週火曜木曜の更新で偶に金曜も更新します。

処理中です...