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11 それから数年

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「すごいですわ、すごいですわ! お義姉様は伯爵家当主の仕事をしながら昼も夜も働いて、義理の妹でしかない私を全力で支えてくださいましたの。今の仕事で成功できたのも全てお義姉様のお陰なのですわ!」


 気が付いたら義妹が大人気作家になっていた。

 目的を叶えるためなら手段を選ばない、主人公の持つ常識にとらわれない自由な発想が、夢を忘れがちな忙しい世の中の人の心をつかむのだそうだ。


 ああ……うん、なるほど。
 ずるいですわ精神とか……あれかしら……。


 昔を振り返ると思い当たることは山ほどあるが、義妹は以前ほど非常識なことを言わなくなったのでよく分からない。

 少なくとも『ずるい』だとか『不平等』だとか『贔屓』だとか……ああ、『姉優遇!』『義妹冷遇!』なんていうのもあったわね……そういうことは言わないし。
 まあ、魔法で縛っているので言えなくなったのか言わなくなったのかは微妙なところだが、結果としてあの頃のような絡まれ方をしなくなった。

 一応、表面上は上手くいっている……のだが…………。


「すごいですわ! すごいですわ! お義姉様のお話をしたら、王妃様が涙ぐんでいましたのよ! 今度、王宮に招待するから是非お義姉様にお会いしたいって!! お義姉様はすごいですわ!!」

「そ……そう……」


 いつからだろうか。義妹に絡まれなくなった代わりに、やたらと懐かれてしまい、彼女は「すごい、すごい」を連呼するようになった。

 人気作家となった義妹の影響力は計り知れず……各国の有名誌は勿論、義妹のファンになった王族などからも話を聞きたいと『お義姉様もご一緒に……』などとお誘いなどを受けるようになってしまって――正直面倒くさい。

 そして私が頭を悩ませているのはそれだけではない。




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