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3 何でもくれるお義姉様
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「ずるい、ずるい」
身の回りのもので私との違いを少しでも感じ取ると、義妹はすぐにそう言って自分の望みを叶えようとする。
お義母様はシングルマザーとなったことで、実家の男爵家とは距離を置いて生活をしていたらしい。実家の支援を受けられぬまま、母子二人で平民同然の暮らしをしていた義妹が突然、うちのような裕福な伯爵家の娘になったのだ。
夜会やお茶会など、生活習慣の違いから身の回りの物が足りないのはよく分かる。
お父様はそのあたりのことには気が付かないので、私が代わりに義妹の為の品物を色々と用意していた。
しかし、そうやって何でもかんでも先回りして与えていたのが良くなかったのだろう。義妹は、私に言えば何でも貰えると勘違いをしてしまったようなのだ。
最初は私も抵抗をした。伯爵家の娘として生活するうえで必要な物は既に与えたし、義妹が欲しがる物の中には私が友人や婚約者から貰った大切な物もあったから、そのあたりの事情を話して義妹をしっかりと諭した。それでも彼女が納得しなかったのでお父様にも相談した。
しかし。
『あの子は経済的に苦しくて、ずっと我慢を強いられてきたのだ。義理とはいえ姉なのだからお前が譲ってやればいいだろう。家のことはお前に任せているのだからお前がどうにかしなさい』
――と、面倒くさがりなお父様は私に丸投げをした。
『当主の許可』という免罪符を手に入れた義妹はとまらない。『ずるい、ずるい』という魔法の言葉で欲しい物は何でも私から貰えると思っている。先月、義妹に奪われたショールは婚約者からの贈り物で大事にしていたのに……。
身の回りのもので私との違いを少しでも感じ取ると、義妹はすぐにそう言って自分の望みを叶えようとする。
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夜会やお茶会など、生活習慣の違いから身の回りの物が足りないのはよく分かる。
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しかし、そうやって何でもかんでも先回りして与えていたのが良くなかったのだろう。義妹は、私に言えば何でも貰えると勘違いをしてしまったようなのだ。
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