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番外編

5 身を焦がすロイエ

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「あ…コラ、ソコ――は! …く……ああああぁ……ヴ…………リエー…ヴル。リエーヴル。リエ、リエ、リエ……愛しい、愛しい私の番……っ!」



 柔らかな舌でロイエの竜鱗に触れられ、堪えきれずに何度も何度も女の名前を呼んで。
 ロイエの全ての欲望が番に向いた。

 心が身体に縛られて。

 ささいな触れ合いですら過剰な幸福が産まれて暴走する。二人の魂がぐちゃくちゃに混ざり合って作り変えられる。



 ああ身体が熱い。魂が焼ける――。



 皮膚を焼く熱で自分を取り戻せば、ロイエは炎の中に居た。


 残された魅了薬の効果だろうか。身を焼かれる強烈な痛みが何故かあの時の壮絶な快楽を思い出させるのだ。

 女との出会いでロイエの全てが変わってしまった。


 あの出会いさえなかったら。
 赤い炎が踊る部屋で、ロイエは痛みと後悔に唇をかみしめる。そうやって食い破った傷口から溢れる赤い血は炎に混ざり流れることはない。


 あの時しっかりと護衛を連れて外出していればあんな裏道には出なかった。そうすればロイエは間違いを犯したりしなかった。

 見聞を広め、それを土産話としてヴィクトリアに話し、そして――。


『待って! ようやく見つけたわぁ♡ 貴方、わたしの運命の番でしょ?』


 快楽で刷り込まれた番への執着がロイエの思考を濁らせる。

 せめて声だけでも聞きたいと願っても、もう部屋の中にヴィクトリアの声は聞こえてこない。唯一思い出せるのは甘えるような、媚びるような番の声だけ。

 想像すら許されなくなった美しい未来は醜悪な現実に上書きされて――。


 身を焼かれる痛みに何度も番との出会いを幻に見て。徐々にロイエの意識が混濁していく中。

 三日三晩。
 ずっと心と身体を炎に焦がされながら。



「愛して…る………ヴ………」



 自分が誰の名前を呼んでいるのか――ロイエは最期まで解らなかった。





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