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番外編

6 家族を捨てたリエーヴル

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 リエーヴルが誘った竜人の男は何とあの有名なドラゴディス帝国の皇帝だった。

 竜人だというだけでもビックリなのに、予想以上の大物だったのには驚いたが、こんな小国の貴族の男など比べ物にならないくらい最高の相手だ。何せ、彼はリエーヴルにとって運命の番なのだから。

 口から出まかせに誘ったが、肌を合わせてみればすぐに相手が本物の番だと気が付いた。彼も同じだろう。

 ロイエは最初の抵抗は嘘のようにリエーヴルを受け入れ、最終的には誘ったリエーヴルが音を上げるほど執拗に求めてきたのだから。

 ああ、彼はリエーヴルの番だ。地位も名誉もあるリエーヴルの運命の番。彼は最高のドレスと快楽をリエーヴルにもたらしてくれるのだ。

 リエーヴルが娼婦になったからこそ、こんな形で彼と出会うことができたのだ。なんて幸せなのだろう!

 半獣人のリエーヴル以上に、竜人のロイエは運命の番への愛を感じてくれているようだった。もしかしたら身分の高い者は番への執着が強いのかもしれない。ロイエは反対してくる彼の生意気な側近達を黙らせ、リエーヴルを帝国に連れ帰ることを即決してくれた。

 リエーヴルはこんなちっぽけな国に未練などない。これからは小国の貴族どころか、皇帝の番として誰もがうらやむ生活を送ることが出来るのだ。リエーヴルはすぐに荷造りを始めた。

 国を離れる前、ロイエに大金を渡された時は首を捻った。


「家族の為とはいえ、愛する君を娼婦のままにするわけにはいかない。だからこれで弟さんの病気を治してくれ」


 そう言われて、弟たちを言い訳に泣き落としたのを思い出した。弟たちになんてもうずっと会ってはいなかったし、両親も死んだことになっている。ロイエは嫉妬心も強いようだし、中途半端に家族とのかかわりを残してリエーヴルが自ら進んで娼婦になったことをバラされてはたまらない。

 リエーヴルはロイエから貰った大金で服や宝石など好きな物を好きなだけ買って、残りを手切れ金として家族に渡した。母は泣いて嫌がっていたが、番と出会ったから邪魔をしないで欲しいと言えば身を引いてくれた。

 貴族だった父親の幸せを願って身を引いた母だ。これでもう二度と会うことはないだろう。




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