【完結】それは本当に私でしたか? 番がいる幸せな生活に魅了された皇帝は喪われた愛に身を焦がす

堀 和三盆

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番外編

3 娼婦となったリエーヴル

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 娼婦となったリエーヴルに初めて付いた客は年配の貴族の男性だった。貴族の中には獣人を嫌がる客もいるが、この男性は控えめなウサギの耳を持つリエーヴルを気に入ってくれたらしい。

 それなりに遊んではいたが、両親が厳しかったこともあり最後までしたことはなかった。リエーヴルが初めてと知った貴族の客はすごく喜んで、代金の他にキレイなドレスを買ってくれた。貴族の令嬢みたいな素敵なドレスだ。それを着て、貴族の男と一緒に出掛けたこともある。初めて見る華やかな世界はリエーヴルを夢中にさせた。

 貴族の男は繰り返しリエーヴルを指名してくれた。かなり羽振りが良いらしく、リエーヴルはたくさんのドレスや宝石を買ってもらった。

 歳を食っていてあまりカッコよくはなかったけれど、この貴族の男に抱かれるとリエーヴルはとても安心した。娼婦だからと手ひどく抱いてくる客が多い中で、彼はリエーヴルをお姫様のように大切に扱ってくれたから。

 貴族の男は特にリエーヴルの耳を気に入っているようで、行為の最中よくそこを触られた。『可愛い、可愛い僕のウサギ……』そう言って優しく耳を撫でながら、興奮してリエーヴルを何度も求めるのだ。

 耳は獣人にとって敏感な場所だから最初は少し嫌だったけれど、リエーヴルはいつの間にかそれを受け入れていた。彼に触られると気持ちがいいとすら感じるようになった。羽振りの良い貴族の男との行為はリエーヴルにとって特別だった。そして更に特別な行為を男に許しているうちにリエーヴルは彼の子を孕んだ。


 リエーヴルのお腹には貴族の子がいる。
 もしかしたら男はこれでリエーヴルを愛人にしてくれるかもしれない。


 そう思ったリエーヴルは男に自分の秘密を話した。

 母親からは本当の父親のことは誰にも話すなと言われていたけれど、リエーヴルには貴族の血が流れているのだ。彼の子供を孕んだのだから、それを伝えれば愛人どころか正妻にだってなれるかもしれない。

 けれど妊娠を告げ、リエーヴルの話を聞いた後。


「ああ、何てことだ。僕は女神様に許されない行為をしてしまった……」


 真っ青になった貴族の男はそんなことをブツブツと呟いて。それっきり店に来てくれなくなった。

 別の客に聞いたところ、どうやら彼は自ら命を絶ってしまったらしい。

 リエーヴルが貴族の血を引くと聞いて怖気づいたのだろうか。羽振りがいいし貴族だと聞いていたが、もしかしたらリエーヴルが思っていたよりも男の身分が低かったのかもしれない。
 それで高貴な血を持つリエーヴルとの将来を悲観して自ら命を絶ってしまったのか。そうとしか考えられない。

 ――しかし、こうなると腹の子は邪魔になる。


 困ったリエーヴルは先輩娼婦に相談した。
 すると。


『ドジねえ。次からは気を付けな』


 先輩娼婦はそう言って、娼館に伝わる特別な料理を教えてくれた。皆、そうやって働き続けているらしい。

 早速、教えられた料理を作って試してみるとすぐに効果が現れた。そのお陰でリエーヴルは休むことなく働き続けることが出来た。




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