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49 離宮での暮らし(ヴィクトリア視点)
しおりを挟む「…母上。いったい父上はどうされてしまったのでしょうか……?」
ロイエの命によりヴィクトリアと三人の子供達は離宮へと移された。
国は荒れ、管理の行き届かない離宮は傷みが酷い。ヴィクトリアの実家に頼み、外からは分からぬように最低限の補修はしてもらったが、快適とは程遠い。
かつての煌びやかな状態を知っている長男のシュタルクは以前と比べ荒れ果てた薄暗い離宮を見てふとそんな言葉を口にした。
おそらくかつて立派だった離宮と父親であるロイエとを重ね合わせてのことだろう。
外交に出て番を連れ帰るまでは、皇帝としてそれくらい立派で、また子煩悩な父親だったから。
その荒廃ぶりに見る影もないのはこの離宮もロイエも同じ。補修ができない分だけロイエの方が質が悪い。それをすぐ傍で見てきた子供達の心情を思うと、ヴィクトリアは胸が痛んだ。
「……ごめんなさいね、シュタルク。陛下との離縁が成立して私の実家へあなた達を連れていければそれが一番良かったのだけれど。継承権の問題があるからと、どうしても許可が下りなかったの。……だから今日からはこの離宮で、貴方達は皇太子教育と皇女教育の続きを受けることになるわ」
「かまいません、母上。勉強などどこででもできます。むしろ余計な雑音がない分、ここの方が集中できるのではないでしょうか」
「そうよ、お母様。お兄さまの言うとおりだわ。それに、わたしこの場所が好きよ! お父さまとイジワルなあの女のいるお城なんかより、お母さまとお兄さまと小さなエクセランとわたしだけの、この場所の方がよっぽど気楽だもの。ええと、ふうき…? だったかしら。とにかく、それのみだれたあっちはエクセランの教育上もよくないと思うの!」
「母上、ラフィネの言うとおりです。家族は俺達だけで充分です。母上も妹も弟も――そして苦労を強いている帝国民も。おかしくなってしまった父上の代わりに、俺がこの手で守れるように皇太子教育を一刻も早く終えられるよう頑張ります」
「あら、お兄さま。わたしだって頑張るわ! お母さまが頑張ってお仕事をしている間、エクセランのお世話はこのわたしにまかせてちょうだい。勉強も……まあそれなりに頑張るわ!」
「シュタルク……ラフィネ……」
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