【完結】それは本当に私でしたか? 番がいる幸せな生活に魅了された皇帝は喪われた愛に身を焦がす

堀 和三盆

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47 部屋に響く笑い声

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「――くそっ! 開けろ! ここを開けてくれ!! 何の為にこんなことをする! ヴィクトリアに危害を加えたら許さないからな!!」


 ドンッ! ドンドン!

 ぶわっ! ぶわわ……!


 ドンドン! ドンドン!
 ドンドンドンドン!

 ぶわっ! ぶわわ!
 ぶわわわわ……っ!!


 …ドン……ッ!

 …ぶわ……っ!


 ドアを壊そうとするたびに足枷から次々に魔力が吸い取られていくが、そんなことはお構いなしにロイエは魔法を発動させようと試み続ける。


 番を得た竜人は最愛のソレを喪えば正気を保ってはいられない。どうにかしてここを出て、連れ去られた番を探しに行かなくては……!


 そんな思いに突き動かされて、身体強化の限界を超えてドアを叩き続けるロイエの両手は血がにじみ骨が砕けてボロボロになっている。

 それでもロイエは止まらない。体内から魔力を振り絞り無理やり手を動かす。

 やがて魔力と体力が尽きて腕がピクリとも上がらなくなったとき――。


「頼む……っ! 私はどうなってもいいっ……だから……ヴィクトリアは、私の大切なヴィクトリアだけはどうか傷つけないでくれ」


 クスクスクス……


 血を吐くような思いでロイエが紡ぎ出した言葉に応えるように。小さな部屋に楽しそうな笑い声が響いた。


 聞き間違える筈がない。物心がつく前から聞いていた、ロイエが何より落ち着くことの出来る大好きな――。


「良かった……! 無事だったんだね、ヴィクトリア。君に何かあったらどうしようかと」

『あら。誰より私を傷つけた貴方がそれを言うの? うふふふふ……あー、可笑しい!』


 ホッと……聞こえてくる声に安堵の声を漏らしたロイエの耳に楽しそうな――それでいてどこか突き放すようなヴィクトリアの笑い声が聞こえてくる。


「ヴィク……トリア?」





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