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46 消えたヴィクトリア

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 目が覚めるとロイエは硬いベッドの上に居た。

 はて、宿のベッドはこんなに酷かったか……? と、どこかぼうっとする頭で考えるも、そんな筈はないと答えを出す。

 あの宿は皇室御用達だ。他国からの賓客や高位貴族も多く利用をする上、ロイエ達に用意されたのはその中でも最上級の部屋。


 泊ったその日の夕食や翌朝の朝食も申し分ない物が出て――。


 そうだ。一刻も早く離宮へ行こうとロイエとヴィクトリアは朝食後すぐに宿を出発し、昼過ぎには到着した。

 そして持ってきた荷物を片付けさせる間にまずはのどを潤しましょうと提案をされて、ヴィクトリアが入れてくれたお茶を飲み――そこで記憶が途切れた。

 そこまで考えて。そのヴィクトリアの姿が見えないことに気付き、ロイエは慌ててベッドの上で身を起こす。


 じゃらり。


 動いたことで足に痛みと重みを感じ、目を走らせて驚いた。頑丈な枷がロイエの足に付けられている。


 まさか、誘拐――その可能性に思い至ったロイエの背中に冷たい汗が流れる。気付けばロイエは喉が切れんばかりに叫んでいた。


「ヴィクトリア! ヴィクトリアはどこに居る!? おい! 誰がこんなことを……ヴィクトリアをどこにやったんだ!」


 愛しい者へ危害を加えられたかもしれないとの思いからぶわりとロイエが持つ豊富な魔力が大きく波打つが、途端に足枷からソレが抜けていく。どうやらロイエに付けられたこの足枷には魔力を吸い取るような細工が施されているらしい。

 ごっそりと魔力が持っていかれる感覚に眩暈がするが、そんなことに構ってはいられない。

 この離宮はロイエの偽番騒動で元の離宮が炎上した後、その跡地に再建されたものだ。そんな経緯もあって自然と足が遠のき一度も使われていなかった。

 勿論使用せずともしっかりと管理はさせていたつもりだが、使用実績がない分どうしても警備体制に隙が出来る。ロイエを面白く思わない人物が入り込み、潜伏していても不思議はない。

 ただでさえロイエが偽者の番に翻弄されている間に国は荒れ、そのせいで国内外に沢山の敵を作ってしまっているのだ。ロイエが何より愛するヴィクトリアにその怒りの矛先が向けられてしまったのかもしれない。

 何と言っても竜人にとって番は絶対。考えたくないが、ロイエに最大限のダメージを与えようと思ったら、ロイエ本人よりも番を狙った方が確実だし効果が高いのだ。


 あの下品で愚かな偽者の番とは違い、ヴィクトリアはロイエにとって本物の番なのだから――。


 その思いに突き動かされるように。
 ドアを叩くロイエのこぶしには自然と力が入る。




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