【完結】それは本当に私でしたか? 番がいる幸せな生活に魅了された皇帝は喪われた愛に身を焦がす

堀 和三盆

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38 ロイエの願い

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 ロイエ自身は一人っ子ということもあり、一刻も早く後継を作らねば――というプレッシャーはあったものの、権力を巡っての血なまぐさい権力闘争とか、そういった類の心配事とは無縁だった。

 けれど、兄弟がいるということは後継を作るプレッシャーからは解放される反面、そういったリスクが上がるということだ。

 そんな話をヴィクトリアにすれば、大袈裟だと笑われてしまった。


「ふふふ……あの子達は純粋に兄を心配しているだけですわ。すぐ傍に近しい者がいるせいか、双子の方がエクセランよりも精神年齢が高いのです。エクセランは心優しいから……シュタルクからすれば、甘いところのあるエクセランに対し、何か気がかりなことがあるのでしょうね。皇帝ともなれば、いざという時に非情な決断をしなければならないこともありますから」

「そうだ――な。私が一人っ子だったからか、つい余計な気を回してしまうのかもしれない。だからこそ、自分の子供には支えになるような兄弟をたくさん作ってやりたいと思っていたというのにな。ははは、私が妙な心配をせずとも、子供達はちゃんと兄弟で支え合っていたということか。――ところで」


 ロイエは父親としての顔を引っ込めて。熱い視線をヴィクトリアに向ける。双子が生まれてからもうずっと、妻との間に体の関係はない。魔力の回復が思わしくない中での出産で、流石にヴィクトリアの消耗が激しかったからだ。

 最近は別々に寝ているが、今日は子供のことで話があると言ってヴィクトリアを夫婦の寝室へと呼び出した。子供のことも勿論心配であったが、こちらの件もそろそろどうにかしたかった。

 長男のエクセランも無事に竜人の儀を終えられたし、そろそろいいのでは――と思う。出産で減ったヴィクトリアの魔力も回復している筈だ。


「エクセランと同じように、双子にも弟か妹が必要だと思わないか?」




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