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27 ――城に響き渡る声――

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 仕事相手に親しく声をかける中で、勘違いしてあの時のように擦り寄ってくる女もいるにはいたが、その美醜にかかわらずロイエはそいつらには目もくれなかった。

 彼女らはヴィクトリアに遠く及ばない。くだらないことに時間を割くくらいなら、自国の発展の為に心を砕いていた方がよほど有意義というものだ。

 やはり子の存在がロイエを成長させたのだろう――と、ロイエはそう思っている。



 段々とロイエが取り組んだ仕事の成果も現れてきて、業種によっては再び成長を始めたものもある。観光客も徐々に戻ってきて、ドラゴディス帝国内の経済も潤いだした。


 最初は引っかかりを感じていた周囲の反応も自然な物に変わっていった。今では行く先々でヴィクトリアとお腹の子に対する温かい言葉をかけられる。
 帝国民全てがドラゴディスの未来の象徴とも言える子供の誕生を今か今かと待ちわびているのだ。



 そして――。



 この日。
 ついにヴィクトリアが産気づいた。


 まだ産まれるまでに時間はあるからとロイエは仕事を手にするものの、気付けば執務室をウロウロと歩き回って朝から落ち着かない。

 何度立ち会ってもこればかりは慣れることはない――と、ごく自然にそう考えた自分にロイエは困惑する。


 どうやら初めての経験によほど取り乱しているらしい。


 今まで身重の妻を持つ側近達の落ち着かぬ様子を見てやれやれと呆れてきたが、いざ愛する妻の出産となると、皇帝といえどもその行動は彼らとたいして変わらぬようだ。ロイエは不甲斐ない自分自身に苦笑した。


 そのままどれくらいの時間が経ったのか。
 バタバタと人が忙しく動き回る気配がした、と思ったら。


 オギャー…オギャー…


 ロイエのいる執務室まで元気な産声が聞こえてきた。
 待ちに待った子供の誕生に、心配と緊張で固まっていたロイエの顔が喜びに緩む。



 そして、それからほんの一瞬遅れて。



「いやぁああああああ! なんで!? なんでよぉおおおおお!」


 ――――出産を終えたばかりの、ヴィクトリアの悲痛な叫びが城内に響き渡った。




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