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23 希望
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ロイエは愛する妻の言葉に大きく目を見開いた。
慈愛に満ちた笑顔を浮かべるヴィクトリア。腹に導かれた手。温かな物がロイエの胸に広がっていく。
「…そこに子供が? もしかして、私達の子供が出来た――のか?」
「ふふふ……昼間、お医者様に見ていただいたの。三カ月ですって。間違いないわ」
それを聞いて、ロイエはヴィクトリアを抱きしめた。この幸せを離すものかと力を込めて……けれど途中でハッと気づき、ヴィクトリアの腹を気遣いながら。
「ははっ、ここに私達の子供がいるのだから、気を付けないとな! 子供に何かあったら大変だ。ありがとう……ありがとうヴィクトリア!! 嬉しいよ! 私達に初めての子供が産まれるんだね」
ロイエは愛しい妻を抱きしめながら、優しく優しくその背を撫でる。ロイエは幸せだった。次から次へと溢れる嬉し涙が、悪夢がもたらした不安や焦りをキレイさっぱりと流し去ってくれる。
ロイエにとって待ちに待った後継者だ。
五十年。それが皇帝ロイエと皇后ヴィクトリアに与えられている幸せの期限。それまでに子が出来なければロイエは嫌でもヴィクトリア以外に妃を娶ることを考えなければいけなくなる。国を安定させるために必要な跡継ぎを残すことが皇帝としての責任だからだ。
偽の番に邪魔をされて、既に多くの時間を無駄にした。騙されていたとはいえ一度裏切ったロイエは二度とヴィクトリアを裏切りたくなかった。これで、ロイエはずっとヴィクトリアだけを愛していけるのだ。
たとえ再び偽者が現れたとしても、今度こそロイエは騙されることはないだろう。
何と言っても二人の間には愛の証である初めての子供がいるのだから……!!
「ありがとう、ありがとう、ヴィクトリア……」
固く抱きしめられたまま。繰り返されるロイエからの感謝の言葉をヴィクトリアはいつもと変わらぬ笑顔で受け取った。
ピクリとも動かない完璧な笑顔を浮かべるヴィクトリア。血が出るほど固く握りしめたその手だけが、ロイエから隠れて小さく震えていた――――。
慈愛に満ちた笑顔を浮かべるヴィクトリア。腹に導かれた手。温かな物がロイエの胸に広がっていく。
「…そこに子供が? もしかして、私達の子供が出来た――のか?」
「ふふふ……昼間、お医者様に見ていただいたの。三カ月ですって。間違いないわ」
それを聞いて、ロイエはヴィクトリアを抱きしめた。この幸せを離すものかと力を込めて……けれど途中でハッと気づき、ヴィクトリアの腹を気遣いながら。
「ははっ、ここに私達の子供がいるのだから、気を付けないとな! 子供に何かあったら大変だ。ありがとう……ありがとうヴィクトリア!! 嬉しいよ! 私達に初めての子供が産まれるんだね」
ロイエは愛しい妻を抱きしめながら、優しく優しくその背を撫でる。ロイエは幸せだった。次から次へと溢れる嬉し涙が、悪夢がもたらした不安や焦りをキレイさっぱりと流し去ってくれる。
ロイエにとって待ちに待った後継者だ。
五十年。それが皇帝ロイエと皇后ヴィクトリアに与えられている幸せの期限。それまでに子が出来なければロイエは嫌でもヴィクトリア以外に妃を娶ることを考えなければいけなくなる。国を安定させるために必要な跡継ぎを残すことが皇帝としての責任だからだ。
偽の番に邪魔をされて、既に多くの時間を無駄にした。騙されていたとはいえ一度裏切ったロイエは二度とヴィクトリアを裏切りたくなかった。これで、ロイエはずっとヴィクトリアだけを愛していけるのだ。
たとえ再び偽者が現れたとしても、今度こそロイエは騙されることはないだろう。
何と言っても二人の間には愛の証である初めての子供がいるのだから……!!
「ありがとう、ありがとう、ヴィクトリア……」
固く抱きしめられたまま。繰り返されるロイエからの感謝の言葉をヴィクトリアはいつもと変わらぬ笑顔で受け取った。
ピクリとも動かない完璧な笑顔を浮かべるヴィクトリア。血が出るほど固く握りしめたその手だけが、ロイエから隠れて小さく震えていた――――。
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