【完結】それは本当に私でしたか? 番がいる幸せな生活に魅了された皇帝は喪われた愛に身を焦がす

堀 和三盆

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20 消せない言葉(ヴィクトリア視点)

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 食事で足りない栄養はヴィクトリアが持つ魔力で補った。そもそも魔力は本人の血肉から出来ている。

 当然。それを使えば使うほどヴィクトリアは更に痩せていく。



 それなのに。



「なんだ。心優しい我が番が、食事を摂らず痩せていくヴィクトリアが心配だと言うから見に来てみれば。それだけ無駄に太っているのなら何も問題はないな。フン。食事を絶つふりをすれば私の気が引けるとでも思ったか。どうせ隠れてご馳走でも食べているのだろう。何だ、その醜い腹は。あさましいことだ」


 着替え中、突然部屋に入ってきた夫の言葉。

 侯爵家から連れてきた気心知れた侍女はとうに取り上げられて。その後、夫の番の手によってヴィクトリアには嫌がらせばかりをする侍女が付けられたが、まったく反応を示さないことに飽きたのか、今や部屋へ来ることすらない。

 なので着替えやその他、身の回りのことは重い腹を労わりつつも全てヴィクトリア自身の手で行っていた。

 その為、現在ヴィクトリアには要件を取り次ぐ者もおらず、突然やってきた侵入者に裸体を見られてしまった。相手とは何度も肌を重ねてきたはずなのに、今はたったそれだけのことで耐えがたい嫌悪感を持ってしまう。

 ヴィクトリアに対する労わりや礼儀はどこかに溶けて消えたのか、部屋のドアをノックされることすらなかった。


 もはや夫には何の期待もしていなかったハズなのに。


 共に子の成長を喜び、その誕生を心待ちにしていたはずの夫からのこの言葉は、とうに限界を超えていたヴィクトリアの心を大きくえぐった。




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