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17 虐げられるヴィクトリア(ヴィクトリア視点)

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 結局、形見のドレスは夫が愛する女に奪われた。


 ヴィクトリアが誰よりも尊敬していた母の形見のドレスは夫の最愛となった女に汚されて。翌朝になって無残な姿でヴィクトリアのもとへと返ってきた。

 夕食時。形見のドレスを身に付けた女はテーブルマナーが苦手だと食材をこぼしまくりドレスはソース塗れ。
 それが可愛いと夫は大喜びをして、女を伴い食事もそこそこに食堂を後にした。

 退出する際、女はヴィクトリアに勝ち誇った目を向けていた。


 夕食のソースと夫との行為を思わせる物にまみれてヴィクトリアの元に返ってきたドレスは下品な香水の匂いと夫の香りが染みついていて。

 憤慨したヴィクトリア付きの侍女が丁寧に洗ってくれたものの元の状態には戻らず、衣装室の奥へとしまい込むことしかできなかった。


 そこから堕ちていくのは早かった。


『皇后にいじめられた』と番が言えば証拠がなくともロイエはそれを信じてヴィクトリアを責め立てた。

 番から際限なく強請られるドレスや宝石、宮殿や別荘。ロイエはそういった番の願いを全て叶え、役人からこのままでは国庫が尽きると言われれば皇帝の名のもとに毎月のように増税が行われた。

 国民の為にとヴィクトリアがそれを諫めれば女の嫉妬は醜いと怒鳴られ暴力を振るわれた。

 優秀な夫の側近も心あるものは更迭され、使用人もヴィクトリアの味方をするものは皇帝の命令でことごとく罷免され、番に阿る者だけが残された。

 ここまで来てもヴィクトリアは夫との離縁を許されず、毎日二人と同じ食卓を囲むことを強要された。


 ヴィクトリアのすぐ目の前で仲の良さを見せつけられて。
 一向に上達しない酷いマナーを見せつけられて。


 日に日にヴィクトリアの食欲はなくなり、ふと気が付けば自分の分だけが下働き用のメニューとなっていた。

 それでも城で出す物だから質は悪くない。

 下働き用の食事などこうなるまで口にしたことはなかったが、どうせもうずっと料理の味など分からないのだ。食事は衛生的で栄養さえあればいい、とヴィクトリアは味のしないそれを黙々と口に運んだ。

 食欲がなくとも、ヴィクトリアにはどうしても食べなければいけない事情があったのだ。


 それなのに。




「…………!」

 この日はたった一口で気が付いた。
 味は分からなくても『ソレ』は分かる。しかも、攻撃されたのがヴィクトリア本人でないとなればなおの事。


 今までたとえ質は下がっても食事にだけは栄養面での配慮がなされていた。ついに、料理人にまで番の魔の手が及んだようだ。




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