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15 娼婦と皇后(ヴィクトリア視点)

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「君は、私の番が娼婦だったからって馬鹿にしているのか? もちろん彼女は何を着ても似合うが、このような昔からの我が国伝統の、清楚で奥ゆかしいデザインのドレスだって似合う筈だ」

「は……? え、娼婦??」

「ああ、そうだ! それがどうしたと言うんだ!! 心優しい彼女は死んだ両親に代わり病弱な兄弟を養うために娼婦になったんだ。君はそんな彼女を、どうしてそんな風に上から目線で一方的に責められる? ましてや、裕福な母親の遺した形見のドレスを見せつけ、ドレス一枚遺してやれない貧しい彼女の両親を馬鹿にするなど言語道断」

「なっ! 誤解ですわ。私は「黙れ!!」」

「反論は許さない! お前などに発言を許していない!! ……君は偶々帝国一の財力を誇る名門侯爵家へと産まれ、何の苦労もなく政略で皇帝の妻という椅子を手に入れたから、彼女のように家族を養うために身を売るしかなかった貧しい女性の気持ちが解らないのだろう?」

「……」

「ハッ! ほら何も言えないだろう!」


 違う。命令をされたからだ。
 決めつけられ発言を封じられ、反論すらさせてもらえないヴィクトリアは怒りの持って行き場がなかった。
 心に産まれた夫への失望を黙って飲み下すことしかできない。


 帝国一の財力を誇る名門侯爵家へと産まれ――それはそうだろう。確かにヴィクトリアは恵まれた環境に産まれた。けれど、ヴィクトリアは何の苦労もしなかったわけではない。

 その恵まれた環境に産まれたがゆえに。
 皇太子の幼馴染だと言う境遇ゆえに、貴族として結ばれてしまった政略的な縁談。

 逃げ出したくても出来なかった。そこにほのかな恋愛感情が産まれたのは、ただ単に運が良かっただけに過ぎない。


 ――今となってはそれも幸運とは言えそうにないが。




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