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6 皇帝の罪

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 ロイエが偽者の番にいいように操られている間。ヴィクトリアは敵ばかりが居る城で、たった一人で戦っていた。皇帝の番と聞き安易に偽者に阿る使用人から蔑ろにされ暴言を吐かれ、時には食事に毒を盛られ命を狙われたことすらあったと聞く。

 残念ながら。悪意あるそれらからヴィクトリアの命を守ったのは偽の番に踊らされていたロイエではなく、正気を失っていたロイエによって一度は地位を追われた、ごく少数の心ある忠臣たちだ。

 妻の献身で正気を取り戻した後はロイエ自身の手で罪を犯した使用人の排除を進めてきたが、まさかまだ雇っている者の中に性悪女の息のかかった者が残っていたのだろうか。

 ロイエは偽の番から解放され、目が覚めた時に見た妻の姿を忘れることが出来ない。

 ヴィクトリアはやせ細り今にも消えてしまいそうで――ロイエは愛する者を喪う恐怖心から一気に現実へと引き戻された。

 けれど、そこまで妻を追い込んでしまったのは他ならぬロイエ自身でもあるのだ。


 ……ヴィクトリアの涙でそれを思い出し、卑劣な偽の番と情けない自分自身への怒りから、ロイエの体内に豊富にある、燃えるような魔力が体外へと漏れ出した。



「……あら? やーね、陛下ったらそんなに怖い顔をしてどうしたの? ふわぁ~…早起きしたせいか、あくびが止まらなくて。眠気覚ましに窓を開けていたのよ」


 ふわわぁ…。

 手で口元を隠し、再び大きなあくびをするヴィクトリアには先ほどまでの悲壮感はない。連日、ロイエに請われるままに日付が替わるまで愛をかわしていたことを考えれば、それもむしろ当然のことのようにも思われる。


「あ……くび? そ、そうか、良かった。私はてっきりその――例の――あの…………女、の件で、その」

「ふふっ、陛下は私がメソメソ泣いているとでも思ったのかしら?」

「っ!! す、……済まない! あ、その……ヴィー、今日は少し、その……ことで話――をしようかと。私はまだ、君にきちんと謝ま「まあ嬉しいわ。陛下は私のことを心配してくださったのね!」」

「あ、ああ――まあ、その、ええと。………………」


 予想とは違う、愛する妻の穏やかな反応から自分の思い違いに気が付いて。行き場を失った怒りと荒れ狂うような強い魔力は空気中に霧散したものの、今度は焦りから自身が口走ってしまった言葉への対処にロイエは苦慮することになった。




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