【完結】それは本当に私でしたか? 番がいる幸せな生活に魅了された皇帝は喪われた愛に身を焦がす

堀 和三盆

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5 今日こそ謝罪を

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 ロイエは新たに皇后に与えられた執務室の前に来ると、声をかける前に大きく深呼吸をした。

 ……ロイエが正気を取り戻してから。不思議なほどヴィクトリアは罪を犯したロイエを責めないが、時々ひどくうつろな表情をしていることがある。

 それを見る度に一度はしっかりと話をしなくては、と思うのだが、ずるいロイエはついつい優しい妻に甘えるままに流されてしまうのだ。

 今日こそはヴィクトリアと話を――と心を決めてヴィクトリアが使っている執務室のドアをノックするが、妻の返事はない。


 留守なのだろうか?
 それとも既に自分の部屋へと戻ってしまったのだろうか?


 ロイエは悩んだのちに、少し待ってから執務室のドアを開けた。

 すると、窓際に腰かけてぼんやりと外を眺める妻がいた。

 どうやらすれ違いにならずに済んだようだ。
 ロイエはホッとして声をかける。


「ヴィー、入るぞ…ヴィー? ヴィー!? どうした!!? 何故泣いているんだ! もしかして誰かに……何か言われたのか!?」


 後ろから声をかけられて。
 ロイエに気が付き振り向いた妻の美しい白磁の頬には一筋の涙が伝っていた。





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