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第一章 体験入会
3 自分へのご褒美! たこ焼き&缶コーヒー
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運動して長湯したからだろうか。喉が渇いて空腹だ。
仕方がないのでお気に入りの店で大好きなたこ焼きを買い、近くの公園で食べることにした。途中、自販機で缶コーヒーを買うのも忘れない。
やや肌寒くなる季節だが、脂肪という名の鎧に守られた俺はいつだってアイスコーヒーだ。
目的地の公園に着くなり手を洗う。この公園は隠れた俺のお食事スポットだ。遊具がなく、あるのは砂場とベンチだけ。にもかかわらずちゃんと水道が設置されているのがありがたい。
奥まったところにあるので子供には人気がなく、どちらかというと工事現場で働く人などの昼休憩の場所として使われていることが多い。俺としてもコンビニの近くなので、ホットスナックを買った際、温かいうちに食べるための場所として利用している。
ベンチに座り。袋を開くとふわり……と鰹節とソースの食欲をそそる匂いが漂ってきた。入っていた楊枝でそれを刺し、落とさぬように慎重に口へと運ぶ。
カリッ……とろっ……!!
噛んだ途端、アッツアッツの半熟状の中身が飛び出してきて、慌ててハフハフと空気で口内を冷ましながらもソレを味わう。
うまい……うますぎる!! 塩分の強いその味が、運動で疲れた体に染みわたる……!!
ダイエットの為にスポーツクラブに行ったのに……と思わないでもなかったが、今日はまだ体験入会だ。勇気を出した自分にちょっとしたご褒美くらいあげてもいい。
それに……実はたこ焼きは、優れたダイエットフードではないかと思っている。
熱すぎてイッキ食いはできないし、何よりその味の濃さゆえ食べ応えもある。それにトロトロの半熟状のその中身は、早食いを防止してくれるだけではなく、喉の渇きすら癒してくれる。
……などと自分に言い訳をしながら食べていたら、あっという間にラスト一個。とりあえず、いったん火照った口の中を冷まそうと、冷えた缶コーヒーを飲み干せば。
ゴクゴクゴク……うっまぁ――――!!
濃くなった口内の塩分を、ミルクの入ったあまぁいコーヒーが見事に中和してくれて、空腹により感じていた全ての欲求が満たされる気がする。一息ついて、さあ、ラスト一個!
そう思ったところに。
ぽっよん……
非常に聞き慣れた音がした。音のほうに目をやれば。
じ~~~~っ。
自分の着ているジャージの上着のポケットから。潜望鏡のようにその体を伸ばして、たこ焼きを見ているスライムがいた。
しばらくたこ焼きをガン見していたが、俺の視線に気が付くとぽよんと体を震わせて、ポケットの中に納まった。
しかし、たこ焼きが気になるのか、そろそろとまた体を伸ばして、たこ焼きと俺を交互に見てくる。
例の、弱点と言われた核が目のように動いて、その視線がよく分かる。
ぽっよん……ぽっよん……
その度に聞こえてくる聞き慣れた音が、まるで「ごっくん」と生唾を飲み込むような音に聞こえて、途端に少しだけ申し訳なくなった。
俺は今日コイツと戦った。ダイエット目的のために。にもかかわらず、俺はソッコーで消費したカロリーをたこ焼きで補充した。
散々、俺をおちょくってくれたスライムだが、その姿からはもう、あのふてぶてしさは感じられない。俺の胸くらいまであったあの巨体が、今や俺のポケットに収まるほどのサイズになっている。意味のないダイエットで、俺がこいつを弱らせたのだ。
元の、丸々と太ったその姿を思い出し、今の姿と見比べて申し訳なく思った俺は――残しておいた最後の一つのたこ焼きをスライムにやった。
そしたらスライムに懐かれた。
仕方がないのでお気に入りの店で大好きなたこ焼きを買い、近くの公園で食べることにした。途中、自販機で缶コーヒーを買うのも忘れない。
やや肌寒くなる季節だが、脂肪という名の鎧に守られた俺はいつだってアイスコーヒーだ。
目的地の公園に着くなり手を洗う。この公園は隠れた俺のお食事スポットだ。遊具がなく、あるのは砂場とベンチだけ。にもかかわらずちゃんと水道が設置されているのがありがたい。
奥まったところにあるので子供には人気がなく、どちらかというと工事現場で働く人などの昼休憩の場所として使われていることが多い。俺としてもコンビニの近くなので、ホットスナックを買った際、温かいうちに食べるための場所として利用している。
ベンチに座り。袋を開くとふわり……と鰹節とソースの食欲をそそる匂いが漂ってきた。入っていた楊枝でそれを刺し、落とさぬように慎重に口へと運ぶ。
カリッ……とろっ……!!
噛んだ途端、アッツアッツの半熟状の中身が飛び出してきて、慌ててハフハフと空気で口内を冷ましながらもソレを味わう。
うまい……うますぎる!! 塩分の強いその味が、運動で疲れた体に染みわたる……!!
ダイエットの為にスポーツクラブに行ったのに……と思わないでもなかったが、今日はまだ体験入会だ。勇気を出した自分にちょっとしたご褒美くらいあげてもいい。
それに……実はたこ焼きは、優れたダイエットフードではないかと思っている。
熱すぎてイッキ食いはできないし、何よりその味の濃さゆえ食べ応えもある。それにトロトロの半熟状のその中身は、早食いを防止してくれるだけではなく、喉の渇きすら癒してくれる。
……などと自分に言い訳をしながら食べていたら、あっという間にラスト一個。とりあえず、いったん火照った口の中を冷まそうと、冷えた缶コーヒーを飲み干せば。
ゴクゴクゴク……うっまぁ――――!!
濃くなった口内の塩分を、ミルクの入ったあまぁいコーヒーが見事に中和してくれて、空腹により感じていた全ての欲求が満たされる気がする。一息ついて、さあ、ラスト一個!
そう思ったところに。
ぽっよん……
非常に聞き慣れた音がした。音のほうに目をやれば。
じ~~~~っ。
自分の着ているジャージの上着のポケットから。潜望鏡のようにその体を伸ばして、たこ焼きを見ているスライムがいた。
しばらくたこ焼きをガン見していたが、俺の視線に気が付くとぽよんと体を震わせて、ポケットの中に納まった。
しかし、たこ焼きが気になるのか、そろそろとまた体を伸ばして、たこ焼きと俺を交互に見てくる。
例の、弱点と言われた核が目のように動いて、その視線がよく分かる。
ぽっよん……ぽっよん……
その度に聞こえてくる聞き慣れた音が、まるで「ごっくん」と生唾を飲み込むような音に聞こえて、途端に少しだけ申し訳なくなった。
俺は今日コイツと戦った。ダイエット目的のために。にもかかわらず、俺はソッコーで消費したカロリーをたこ焼きで補充した。
散々、俺をおちょくってくれたスライムだが、その姿からはもう、あのふてぶてしさは感じられない。俺の胸くらいまであったあの巨体が、今や俺のポケットに収まるほどのサイズになっている。意味のないダイエットで、俺がこいつを弱らせたのだ。
元の、丸々と太ったその姿を思い出し、今の姿と見比べて申し訳なく思った俺は――残しておいた最後の一つのたこ焼きをスライムにやった。
そしたらスライムに懐かれた。
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