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そのときのこと 後編(オネスト視点)
しおりを挟む正直なところ、若く美しいままのリベルタを残して逝くオネストの心残りが無くなることはない。
それでもオネストはこうなることは分かっていたので、いつその時がきてもいいように、機会があろうとなかろうとリベルタに対し自らの思いは伝えてきた。
だから優しい声を聞くたびに大喜びで戻ってきたけれど、毎回同じような事しか言えてない。
――それでも言わずにいられない。
「リベルタ愛している。君に出会えて、僕は本当に幸せだった」
「オネスト愛しているわ。貴方に出会えて、私は本当に幸せだった」
「えへへ、あー、やっぱり愛している人に言ってもらうと嬉しいなぁ(てれてれ)。ああ、もう、リベルタ本当に愛してる……っ!!」
「ふふふ、貴方ってば本当に変わらないんだから。ねえ、オネスト、私も愛している。私も、何度だって言うわ。オネストを本当に愛しているの」
そう言って、みずみずしい唇でオネストの頬に口づけをするリベルタ。若く美しいままの彼女はフットワークも軽い。
恐らくオネストの顔は赤くなっていることだろう。
番の件があってから。リベルタはオネストに頻繁に愛していると伝えてくれるようになった。伝えられる機会に伝えておかなければ後悔すると思ったらしい。そして幸せなことにオネストには充分伝わっている。
それでも何度言われても嬉しいし、何度言われても照れてしまう。
ただ、「コレに気付かせてくれたことだけは番に感謝しているの」と嬉しそうに笑うのだけはやめてもらいたい。ちょっぴり面白くなく思ってしまうから。
日頃から思いを伝えあってきたお陰で、言い残したことも伝えきれなかったことも何も無い。
それでも、この日。
オネストは思う存分リベルタと話し込んだ。
ねえ、リベルタ。僕は先に逝ってしまうけど、あまり悲しまないで。君と会えなくなるのは寂しいし、きっと僕もつらくて泣いちゃうと思うから、泣かないでくれとは言わない。
でもさ、次に逢う時はお互い笑顔でいたいじゃないか。
だからさ、どんなに二人が泣いていても、思わず吹き出して笑っちゃうような楽しくて面白いことを、できるだけたくさん見つけてきて欲しいんだ。そうしたらどんなに寂しくたって、泣いていたって、すぐに笑顔になれると思うから。
僕も君を一人にするのは心配だし、先祖返りの君は寿命が分からないから不安になることもあると思うけど、その分、たくさんの笑顔の元を見つけられるんじゃないかな。
僕たちの家族のこととか。
国のこととか。
気になることが多すぎて、きっと人間の一生分じゃ足りないよね。それでいくと君はどれくらい見ることが出来るんだろう。考えたら楽しくなってこないかい? 僕は楽しみだな。
だからさ、リベルタ。
愛する君の目で。
僕たちの愛する家族と、僕たちの愛する国の様子を見て来てよ……。
ふと気が付いたらオネストは笑んだ目を閉じていた。
途中までは確かに在った相槌は聞こえなくなって。自らのしわがれた声だけが口から発せられている。
だから、どこまでリベルタに話が出来たのかは分からない。
……でも、回復魔法が得意なリベルタのお陰でこのやり取りもオネストが覚えているだけで既に5~6回はやっている。だから、きっと伝わっているに違いない。
ああ、ほら。僕はもう面白いことを見つけたよ。この話をしたら、君はどんな笑顔を見せてくれるのか……想像したら泣いてしまった。
ほら、リベルタ。知っての通り僕は弱いし泣き虫だから。きっとたくさんの面白い話が必要だ。大丈夫、君ならいっぱい見つけられるよ。
強くて優しい僕のリベルタ。
君の話を聞く日が楽しみだ。
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