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17 『愛している』と伝えたい

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「オネスト……。あの、ね、実は……」


 母国で愛していた番のこと。
 遠く離れたら番への愛が消えたこと。
 近づくことで番への愛が甦るのが怖いこと。


 リベルタは事実を隠すことはしなかった。


 実家の爵位継承問題が絡んでいる以上、リベルタが母国へ帰らぬという選択はあり得ない。結婚式の中止は避けられないし、オネストを当事者として巻き込んでしまう以上は全てを正直に話すべきだろう。


 ――そして。


「今、私が愛しているのは貴方よ。オネストのことを心から愛している。貴方も、貴方と二人で築き上げてきたこの国も、今の私にとっては何より大切なの。今の私には番への思いなんて残っていない。だけど、母国から離れることで消えていた番への愛が、近づくことで甦るかもしれないわ。そうしたら、代わりに貴方への愛が消えてしまうかもしれない。それが、何より怖いのよ……貴方を、本当に愛しているから――」


『愛している』――その言葉を口に出してみて。
 リベルタは今までソレを、相手にハッキリとは伝えていなかったことに気が付いた。

 そして、一度口に出したら止まらなくなった。



 リベルタは一度、番への執着が突然消えるのを経験している。それはリベルタの意志とは無関係だった。

 あの時のように、オネストへの愛が突然消えたらと思うと恐ろしい。リベルタが生まれついて持っていた番への愛とは違い、今度は自らの意志で大事に築き上げてきた愛だからこそ猶更だ。

 だからこそ、あの時とは比べようもないほどの恐怖を感じている――。



「こんなに、こんなに貴方のことを愛しているのに……!」



 思いが残っているうちに。消えてしまう前に。

 しっかりと相手に伝えようと思ったら意外なほどソレはすんなりとリベルタの口から出てきてくれた。


 今まではどことなく。本来なら無条件で自分を愛してくれるはずの番からすら濁されていたせいで、口にするのをあえて避けてきたような言葉ではあったけれど。

 今は相手に知られることなく、リベルタの抱いている思いが消えてしまうことの方が怖かった。


「う……うん、モチロン僕もリベルタを愛しているよ(てれてれ)。えへへ、その……ありがとう。あー、やっぱり愛している人に言ってもらうと嬉しいなぁ。ああ、もう、リベルタ本当に愛してる……っ!!」


 今までの分を埋めるかのように。突然大盤振る舞いされる最上級の愛の言葉にオネストは喜びを隠しきれないようだ。満面の笑みを浮かべ、顔を真っ赤にして照れている。

 正直、そんな場合ではないとリベルタは言いたかったが、それほどまでにオネストに対し自らの持つ好意を伝えていなかったのはリベルタだ。そう思うと泣きたくなってくる。

 リベルタの目に涙が浮かぶのを見て、オネストが慌ててそれを拭った。




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