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1 新獣人国のデビュタント

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「お前を愛することはない」
「お前を愛することはない」
「お前を愛することはない」


 デビュタントを迎えた令嬢達との対面の後。一人一人にそう告げていく若き竜王――ヴァール。

 彼は新興国である新獣人国の国王だ。


 かつて。竜人・鳥人・獣人などの人間以外の種族が集まって出来た国が在った。番と呼ばれる運命の伴侶を持つ彼らは、高知能・高魔力の竜人を中心に独自の文化を築いていた。

 しかし番に対するあまりの執着の強さから、国外からの番の連れ去りや、それに伴う家族との面会拒否など多くの問題を抱え、人間国連合との全面衝突が起きて敗北。
 国はなくなり、獣人達の自治権と引き換えに、かつての王族は人質のように人間の国へと送られた。以後、王族は人間の国で貴族として生きることになる。

 一応の自治権は得たものの、神がかり的な能力で国を支えてきた王族を失ったことでかつての隆盛は失われ、困窮する獣人たち。生活の為に自治領を出た多くの獣人たちは人間国の庇護下に入ったが、文化や習性の違いなどから馴染めぬ者も多かった。
 個々の能力は高いものの、獣人たちは徐々に数を減らしていく。


 しかし、人間国の貴族として生きていた王族が、偶然人間の番を得たことで流れが変わった。


 番を得た竜人は力を増す。

 それに加え、番だった人間が獣人の研究者で竜人に対しても理解があったことと、旧獣人国の王族が人間国で暮らしていくうちに人間側の常識を身に付けたことも大きい。

 長きに渡り人間と暮らし、人間社会の常識も身に付けた今の王族ならば問題行動をとることもないだろう――との判断から、条件付きで獣人国の復活が認められたのだ。

 それが、現王ヴァールの祖父の代。

 元々、身体能力は人間を遥かにしのぐ獣人たちだ。政略にも長けた竜人の王族を取り戻したことにより、人間国からの独立以降は問題行動もなく、しっかりと国としての体裁を整え現在へと繋がっている。


 その、新獣人国の現在の国王であるヴァールは番探しに手間取っていた。



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