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7 不審者好き王子の誕生(王子視点)
しおりを挟む僕は産まれてはいけない子供だった――そう、聞かされると同時に、いかに両親から愛されているかを説明された。そのうえで暗部に所属する育ての父さん母さんたちからは惜しみない愛情を注がれた。
だから、僕がやさぐれたり思い詰めたりすることはない。
暗部の父さん母さんたちは言葉が足りなかったり、時に虐待に思えるほど行動が荒々しかったりするけれど、その根底にある愛情が僕にはしっかり「見えて」いたからごく自然にその愛情を受け取れたのだと思う。
周囲にも、実の父である国王にも言っていないけど、僕には母親譲りの特殊スキルがある。この国とは魔法の体系が違うため、母の出身国では自然とこの国とは違う魔力の使い方が発展していた。
その中でも僕が母から受け継いだのは王家の人間のみが使えるという特殊スキル。人の感情が見えるのだ。この国ではオーラとか呼ばれている物と近いと思う。
僕を育ててくれた影の父さん母さんたちは全員、顔を隠していたけれど、漏れ出てくるオーラまでは隠せない。
だから。
「自分の立場を弁えろ。不味くても食事を残すな。死にたくなければ食え!」
とか激しい口調で言われても。
『難しい立場にいるんだから、好き嫌いをしていてはいけないよ。その方が生存確率上がるから。君には生きていて欲しいんだ!』
と正しい言葉で理解できた。
母も、このスキルがあったからこそ父との間の愛を育めたのだと思う。繰り返される戦闘の中、停戦の条約を確固たるものにするための、形だけの婚姻だったのにもかかわらず、父が母を目の前にすると、気遣いのオーラがあふれ出ていたそうだから。
そうして産まれた僕は他の王族や高位貴族から警戒された。母の出身国である敵国が、我が国を乗っ取る道具として利用するつもりじゃないかと疑われていたのだ。命を狙われたことは数知れない。その度に、影の両親たちが守ってくれたけど。
政治的に望まれなかった僕だけど、両親は僕を愛してくれていた。身を守るために離れて生活していたからあまり会えなかったけど、与えられた少ない機会にちゃんと『色』で確認できた。だから不安に思うことはない。
とはいえ、僕にとっての『両親』はやはり命懸けで育ててくれた暗部の人たちだ。彼らは時に厳しく、時に過保護なまでに、その技術や知識を僕に与えてくれたし、僕が幸せを掴むための協力を惜しまなかった。
顔を隠している彼らは危険な仕事に携わっているせいか、入れ替わりも激しかった。一度しか会えなかった人もいる。それでも、皆が皆、まるで本当の子供を育てるように僕に生き抜く力を与えてくれたのだ。彼らの出すオーラはいつも、僕への気遣いに溢れていた。
そんな生活が長く続き。ある程度僕も自分の身を自分で守れるくらいまでは成長した頃。僕に転機が訪れた。
貴族学園入学前に、僕を本来の立ち位置に戻らせようとする動きが出てきたのだ。この頃、どっぷりと影の人たちと過ごしていたからこのままでもいいかと思っていたけれど、影の両親たちは僕を日の当たる場所に戻したがった。
ある程度実力を身に着けた今、国内の有力貴族の後見があれば難しくはないだろうとの判断だ。そのためには婚姻を結ぶのが手っ取り早い。相手を見繕われて、気が付けば見合いまでセッティングされていた。直前になって渡された絵姿にはとんでもない美少女が描かれていて、彼女との見合いを成功させるようにと強く言われた。
愛情からだと分かっていても壁を作られたようで当時は少し寂しく感じたが、今となっては感謝しかない。
そして、僕は彼女と出会った。
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