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62 二人で歩む初めての結婚生活(ふわふわ耳視点)
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「グロース…」
「お帰りなさい、先生! 少し元気がないみたいですが、何か悩み事ですか?」
愛しい人の声がする。
本当は足音で帰ってくるのが判っていたけれど、今日は体調が悪くて動けなかった。
そういう時は無理して玄関まで迎えに出ようとせず、大人しく座っているよう厳しく言われている。……ので、きちんと言いつけを守っている。
無理をしても、先生には顔色一つで伝わってしまうのだから仕方がない。二回も看取ってくれた先生にとって、私の健康状態など手に取るように分かるのだ。
――が、それはこちら側にも言えること。
先生の声を聞けば、何か悩みを抱えているのが分かるのだ。
「ああ……実は、同僚に親睦会に誘われてしまってな……行った方がいいのは分かっているのだが、今、研究がいいところなんだ。欲しかった資料がやっと手に入って……」
「なるほど。……つまり、先生は親睦会に参加をせずに、資料読みを優先させたいのですね? それならばいい口実がありますよ。『身重の妻が心配なので傍に居てあげたい』と言えばいいんです」
「それだけで? 私が妊娠しているわけでもないのに?」
「はい! これなら上手く断れるうえに、周囲からの先生の評価も上がります。しかもこれ、数カ月は同じ言い訳が使えるんですよ」
「それは素晴らしいな! そんな言い訳、私では考えもつかなかった。ありがとう。助かったよ、グロース。早速明日使ってみるとしよう」
「うふふ、先生のお役に立てて良かったです!」
「……ええ……と、…先生? 何して……??」
「……ん? ああ、悪い。起こしてしまったか」
日差しはぽかぽか。買ったばかりのクッションはふわふわ。少し開けた窓からは爽やかな風が入ってきて心地がいい。
ソファーでつい居眠りをして、目が覚めたら先生が私の血圧を測っていた。
親睦会当日。
予定通りに先生は職場の親睦会を欠席し、嬉々として自宅の研究室に籠り資料を読み込んでいたはずなのだが。
「ふむ、血圧は正常だな」
そう言うと、今度はそのまま流れるように熱を測られた。
前世から長く続く習慣から、つい先生のなすがままになっていたが。……よく考えると理由が分からない。
特に体調を崩しているわけでもないのだが。
「あの……先生? 言い訳に使ったからと言って、本当に私についていなくてもいいんですよ? せっかく親睦会を欠席したのに、研究の方はいいのですか?」
「ん? ああ、研究なら君のお陰で順調だ。気になっていた資料を読み終えて、キリがいいから休憩をとっていたんだ。ふむ、こちらも特に問題はないようだ」
カリカリカリカリ…
カリカリカリカリ…
例のごとく何やら熱心にメモを取る先生。これは、いったい何をしているのかしら??
先生の考え方や行動は全て把握しているつもりだったけれど、コレは初めてのことなので流石によく分からない。
「お帰りなさい、先生! 少し元気がないみたいですが、何か悩み事ですか?」
愛しい人の声がする。
本当は足音で帰ってくるのが判っていたけれど、今日は体調が悪くて動けなかった。
そういう時は無理して玄関まで迎えに出ようとせず、大人しく座っているよう厳しく言われている。……ので、きちんと言いつけを守っている。
無理をしても、先生には顔色一つで伝わってしまうのだから仕方がない。二回も看取ってくれた先生にとって、私の健康状態など手に取るように分かるのだ。
――が、それはこちら側にも言えること。
先生の声を聞けば、何か悩みを抱えているのが分かるのだ。
「ああ……実は、同僚に親睦会に誘われてしまってな……行った方がいいのは分かっているのだが、今、研究がいいところなんだ。欲しかった資料がやっと手に入って……」
「なるほど。……つまり、先生は親睦会に参加をせずに、資料読みを優先させたいのですね? それならばいい口実がありますよ。『身重の妻が心配なので傍に居てあげたい』と言えばいいんです」
「それだけで? 私が妊娠しているわけでもないのに?」
「はい! これなら上手く断れるうえに、周囲からの先生の評価も上がります。しかもこれ、数カ月は同じ言い訳が使えるんですよ」
「それは素晴らしいな! そんな言い訳、私では考えもつかなかった。ありがとう。助かったよ、グロース。早速明日使ってみるとしよう」
「うふふ、先生のお役に立てて良かったです!」
「……ええ……と、…先生? 何して……??」
「……ん? ああ、悪い。起こしてしまったか」
日差しはぽかぽか。買ったばかりのクッションはふわふわ。少し開けた窓からは爽やかな風が入ってきて心地がいい。
ソファーでつい居眠りをして、目が覚めたら先生が私の血圧を測っていた。
親睦会当日。
予定通りに先生は職場の親睦会を欠席し、嬉々として自宅の研究室に籠り資料を読み込んでいたはずなのだが。
「ふむ、血圧は正常だな」
そう言うと、今度はそのまま流れるように熱を測られた。
前世から長く続く習慣から、つい先生のなすがままになっていたが。……よく考えると理由が分からない。
特に体調を崩しているわけでもないのだが。
「あの……先生? 言い訳に使ったからと言って、本当に私についていなくてもいいんですよ? せっかく親睦会を欠席したのに、研究の方はいいのですか?」
「ん? ああ、研究なら君のお陰で順調だ。気になっていた資料を読み終えて、キリがいいから休憩をとっていたんだ。ふむ、こちらも特に問題はないようだ」
カリカリカリカリ…
カリカリカリカリ…
例のごとく何やら熱心にメモを取る先生。これは、いったい何をしているのかしら??
先生の考え方や行動は全て把握しているつもりだったけれど、コレは初めてのことなので流石によく分からない。
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