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55 天の配剤 ~前世での女神様の救済措置~
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「構いません。ただ――出来ればまた先生に診てもらいたいのですが」
「ああ、それは大丈夫。『ソレ』を診られるのは彼しかいないから自動的にそうなるわ。ソレの発生時期とあの子の存在は同時期って決まっているの。いわゆる天の配剤ってやつね。そのお願いなら、先ほどの願い事で同時に叶えてあげられるわ。……でも、貴女の獣人としての幸せはいいの? ある程度、運命の番とは人生が交差するものだけど、確実に出会う為には願い事を使った方が早いわよ? だから他の獣人は皆そうしているの。確実に幸せを掴むためにね」
「構いません。相手には悪いけど、私は番との未来は望んでいません。見た目ほど獣人としての血が濃くないせいか、番に対しての思いよりも、恩を受けた先生に幸せになってもらいたい思いの方が強いのです。お願いします女神様。先生を幸せにすることが、私にとっての幸せです。先生と出会う事さえできれば、後は自分の力で幸せを掴んでみせます。そのために、今と同じ器が必要なんです」
「……ああ、そういうことなの。獣人と人間、二つの血を持つ貴女も成すべきことがあったのね」
「成すべきこと? 私は自分が幸せになるために、獣人としての本能と人間としての理性、両方を使って大好きな先生を幸せにしたいだけです。……たとえ、獣人として一番に考えるべき番の幸せを裏切ってでも」
「……いいわ。私は外見から誤解されがちだけど、獣人だけでなく人間やその他、全ての生物を管轄しているの。獣人の番が人間にも存在したりするでしょう? あれがその証拠。圧倒的に同種族同士が多いからその数は少ないけどね。例外を頑なに認めないほど狭量ではないつもりよ。私は、私が愛するこの地に住まう……子の血に住まう、全ての生き物の幸せを願っているの。そのためなら助力は惜しまない。だから貴女の決断を応援するわ……と言っても、記憶を残してあげる以外の手助けは出来ないけれど」
「ありがとうございます、女神様。充分です。何度だって同じ結論にたどり着くとは思うけど、私は少しでも早く先生を幸せにするための行動をとりたいので、もし今の記憶を残してもらえるならすごく助かります。先生に恩返しできる機会さえ貰えたら、自分が幸せになるための努力は自分でします」
「獣にも人にもなり切れず、何度も同じ後悔を繰り返す者が多い中で、貴女は迷うことなく困難な道を選ぶのね。……獣人としても人間としても少しずつ欠けているからこそ、ハッキリと道が見えるなんてことがあるのかしら」
優しい、優しい、慈愛に満ちた女神様の声。
それでいて、声と同様に慈愛の浮かんだ表情にはどこか抗えない残酷さのようなものも同居している。
決して甘いばかりでないのは、多くの運命を見守ってきた女神様が女神様たる所以なのだろう。
『長きに渡り望むと望まざるに関わらず他者の後悔に巻き込まれてきた愛しい子。………次に生まれ変わる際に、アナタの願いを叶えてあげましょう…………』
だからどうか、あの子を幸せに……女神様が、何故かほんの少し済まなそうに付け足した。
「ああ、それは大丈夫。『ソレ』を診られるのは彼しかいないから自動的にそうなるわ。ソレの発生時期とあの子の存在は同時期って決まっているの。いわゆる天の配剤ってやつね。そのお願いなら、先ほどの願い事で同時に叶えてあげられるわ。……でも、貴女の獣人としての幸せはいいの? ある程度、運命の番とは人生が交差するものだけど、確実に出会う為には願い事を使った方が早いわよ? だから他の獣人は皆そうしているの。確実に幸せを掴むためにね」
「構いません。相手には悪いけど、私は番との未来は望んでいません。見た目ほど獣人としての血が濃くないせいか、番に対しての思いよりも、恩を受けた先生に幸せになってもらいたい思いの方が強いのです。お願いします女神様。先生を幸せにすることが、私にとっての幸せです。先生と出会う事さえできれば、後は自分の力で幸せを掴んでみせます。そのために、今と同じ器が必要なんです」
「……ああ、そういうことなの。獣人と人間、二つの血を持つ貴女も成すべきことがあったのね」
「成すべきこと? 私は自分が幸せになるために、獣人としての本能と人間としての理性、両方を使って大好きな先生を幸せにしたいだけです。……たとえ、獣人として一番に考えるべき番の幸せを裏切ってでも」
「……いいわ。私は外見から誤解されがちだけど、獣人だけでなく人間やその他、全ての生物を管轄しているの。獣人の番が人間にも存在したりするでしょう? あれがその証拠。圧倒的に同種族同士が多いからその数は少ないけどね。例外を頑なに認めないほど狭量ではないつもりよ。私は、私が愛するこの地に住まう……子の血に住まう、全ての生き物の幸せを願っているの。そのためなら助力は惜しまない。だから貴女の決断を応援するわ……と言っても、記憶を残してあげる以外の手助けは出来ないけれど」
「ありがとうございます、女神様。充分です。何度だって同じ結論にたどり着くとは思うけど、私は少しでも早く先生を幸せにするための行動をとりたいので、もし今の記憶を残してもらえるならすごく助かります。先生に恩返しできる機会さえ貰えたら、自分が幸せになるための努力は自分でします」
「獣にも人にもなり切れず、何度も同じ後悔を繰り返す者が多い中で、貴女は迷うことなく困難な道を選ぶのね。……獣人としても人間としても少しずつ欠けているからこそ、ハッキリと道が見えるなんてことがあるのかしら」
優しい、優しい、慈愛に満ちた女神様の声。
それでいて、声と同様に慈愛の浮かんだ表情にはどこか抗えない残酷さのようなものも同居している。
決して甘いばかりでないのは、多くの運命を見守ってきた女神様が女神様たる所以なのだろう。
『長きに渡り望むと望まざるに関わらず他者の後悔に巻き込まれてきた愛しい子。………次に生まれ変わる際に、アナタの願いを叶えてあげましょう…………』
だからどうか、あの子を幸せに……女神様が、何故かほんの少し済まなそうに付け足した。
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