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51 今度は間違えない(番視点)
しおりを挟む「お嬢様! 危険です。いけません、こんなところへお1人で」
「大丈夫よ、少しの時間だけだから。それに一人じゃないわ。先生もすぐにいらっしゃるの」
「わかりました。……ですが、オレも同席します。あと絶対に檻には近づかないで下さいね」
「ありがとう。心強いわ」
可愛らしい声と足音が俺のいる牢へと近づいてくる。
先ほどから感じている甘やかな香りに心臓の音が騒がしい。
ガシャン!
俺は思わず自らを閉じ込めている鉄格子へと手をかけた。
そして。
「貴方が食事を摂っていないと連絡を貰ったの。大丈夫、変な物は入っていないからしっかりと食べて。そうしたらちゃんとお話をしましょう?」
彼女が先ほど下げられた食事を持って戻ってきた。そして、誰よりも愛らしく愛しい声でそう言った。食事を渡してくれて、その白くキレイな手で水差しからコップに水を注いでくれる。
それだけであれほどなかった食欲が戻り、あっという間に平らげてしまった。
「お水もっといかが?」
「頼む」
勧められるままに水も飲んだ。いくらだって飲めそうだ。しかし、ここのトイレはむき出しだ。愛しい番の目の前で情けない姿は見せたくない。なので、これくらいにしておいた方がいいだろう。
「ご馳走様……美味しかった」
「良かった。あれから貴方がほとんど食事に手を付けていないって連絡を貰ったから急いで来たの。心配したわ」
連絡……急いで来た? ということは、公爵家の御令嬢ではない? そう言えば――犬の野郎は『悪いが、うちの旦那様の方がよっぽどあのお嬢さんと仲が良さそうじゃないか』とか言っていたな。と、いうことはあの時のオスが公爵家の人間か。
ならば――心配はいらないよな?
急いで駆けつけてくれるほど俺の心配をしてくれていたんだろう?
やっぱり食事は摂らないとダメだな。碌なことを考えないし、何より頭が回らない。落ち着いて考えれば何がいけなかったのかもよく分かる。
そうだ。俺達は獣人……ただの獣じゃないんだ。焦っていたとはいえ、屋外であんな風に手を出そうとして、拒絶されても当たり前じゃないか。捕まえてもらってむしろ良かったんだ。
人目の付かない路地裏とはいえ、人間や犬があんなに来るような場所で馬鹿だった。他のオスに大事な番の裸を見られでもしたらどうする。
「もう大丈夫だ。今度は間違えないから安心してくれ。君さえ――番の君さえ居てくれれば、それだけで俺は」
「違うわ」
「え? 違うって……ああ、もしかして、まだ怒っているのか? あの時は番を失うかもしれないと思って」
「だから、違うの。ごめんなさい……私が選んだ番は貴方じゃないの」
「……どういう……ことだ…………?」
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