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44 今世(ふわふわ耳視点)
しおりを挟むそれから先生とは色んな話をした。
先生は転生を重ねすぎて、あまり細かいことは覚えていないらしい。特にリュシーの前世についてはまったく覚えていなかった。
だから前にリュシーの目の治療を頼んだ時には無反応だったのね……って言うか、先生は私の時も無反応だったわよね?
まあ、その辺のことは割とどうでもよかったのかしら?? 記憶があろうがなかろうが、治療について先生の対応が変わるとは思えないもの。うん、きっとそう。
どういう因果かは分からないけれど、今回、リュシーも前回と似たような環境に産まれていた。孤児院で育って。目が見えないことで苦労して。名前もそのまま。
彼女と出会った領地の孤児院は私が生まれ変わってもまだ存在していた。名簿にリュシーの名前を見つけてもしや……と思い調べて、実際に彼女が居た時は驚いた。
ただし、彼女には前世の記憶がなかった。それでも私はリュシーだとすぐに分かったし、彼女も何かしら私に対して感じる所はあるようで、すぐに心を開いてくれた。
当時、私は既に魔法医の先生と出会って、病気の発症を抑える治療を受けていた。だからすぐに先生にお願いして彼女の治療もしてもらったのだ。そのお陰で私とリュシー、二人とも移植が必要となる前に病気を抑え込むことが出来た。
リュシーは治療を始めるのが少し遅かったせいか眼鏡が必要になってしまったけれど、本人はちっとも気にしていないみたいだった。目が見えるようになっただけですごく嬉しい、と泣いて喜んでいた。
リュシーったら生まれ変わってもとっても素直でいい子! 今回のことでも思ったけれど、人って生まれ変わったくらいでは根本的なところは変わらないのね!
もちろんリュシーとは大人になった今でも仲良しよ。
成人した後はそのまま孤児院で働いてくれているの。本当は侯爵家で働いてもらおうと思っていたのだけれど……『孤児院出身だからこそ足りないものが分かるから』って、それは固辞された。
彼女は彼女でやりたいことが出来たみたいで嬉しいわ。だから、泣く泣く諦めて彼女の夢を応援することにした。
……それに、実はリュシーにはあの場所を離れられない理由もあるのよね。ふふ……前世に続いて今世も、彼女は番に出会えたの。領地の、孤児院がある街の騎士団に番の彼が居たから離れるわけにいかないのよ。
前世では遠目でしか見ていないけれど……とっても大きくて優しそうな人だった。幸せなのはリュシーの顔を見れば分かるから心配なんてしてないわ。ただ、ちょっぴり……お友達をとられてしまって寂しい感じはしたけれどね。
でも、リュシーが治療の為に王都に来るときは、必ずウチに泊まってもらっているの。仕事に都合がつくときは数日滞在してくれるわ。朝まで話し込んだって二人の話題が尽きることはない。だから親友としてはそれで満足よ。幸せになった番の話が聞けるしね!
ただ、弟の初恋がリュシーだったから、彼女が滞在するたび弟はほんの少し複雑そうだけど。
まぁ、ウチの両親とは違って、リュシーと恋人さんは心から愛し合っている番同士のカップルだから、流石に弟の出る幕はないわね。
それでも姉が初恋相手でなかっただけでも今回の弟は健全だし、お姉様としては安心だわ。だから可愛い弟の失恋の愚痴くらい、お姉様がいくらでも聞いてあげる。
両親や弟まで生まれ変わっているなんて何かしらの作為的な物を感じるけれど、今回は姉弟でとてもいい距離感を築けていると思う。番であるはずの両親は相変わらずだけど。
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