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34 突然の出会い(ふわふわ耳視点)
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「…………っ!!」
しまった見つかった――そう思った時には手遅れだった。
向こうも番の存在に気が付き、こちらへ向かって駆けてくるのが分かった。慌てて目を逸らしたが間に合わなかったようだ。
「番が見ているのでさようならっ!!」
大事な人を巻き込むわけにはいかない。失礼にならないようにどうにか挨拶だけ済ませると、私は全速力でその場を後にした。
番が近くにいる――それに気が付いた私は興味本位でそちらに目を向けてしまった。
かなり遠くに相手が居たので安心してしまったのだ。
愛し合う相手がいる者は相手を守るように番の認識範囲が狭くなる――。そんな話を聞いたことがあったから。
その説を話してくれた人を私は心から信頼していたし、何なら役に立ちたいとも思っていた。せっかくまた獣人に産まれたのだから、実験するには都合がいいと思ったのだ。
――あとは、ほんのちょっぴりの好奇心。番を見たくらいでは自分の思いが揺らがない自信もあったので、躊躇する気持ちは無かった。
結果は――……どうなんだろうな、これ?
良い人体実験になると思ったのだが、
「ぜえぜえ、はあはあ……」
息が上がる。前世と違い、走ることが出来る私。とは言っても幼い頃は前世と同じ病に罹っていたし、克服した今も走ることが苦手なのは変わらない。そもそも前世と全く同じ貴族令嬢なのだ。全速力で走る機会などほとんどない。
ああ、もう。何で番になど興味を持ってしまったのか。
あまり人の多いところは得意ではないが、なるべく人ごみに紛れるように逃げ回った。幸い私はあまり背が高くない。障害物に身を隠しながら移動していたお陰で、あまり距離を縮められてはいないようだ。
と、いうか。何度か追いつかれそうになった場面はあったが、そのたびに女性たちが物理的な障害となって助けてくれた。
あまりに遠すぎて顔はよく見えなかったが、前世、私が死んでからリュシーが報告をしてくれた通りなのだろう。キレイなお姉様たち(…といってもスペックと成長に差があるだけで多分私とそんなに年齢差はないと思われる)が、私の番らしき背の高い男性に話しかけて時間を稼いでくれたのだ。
何人も何人も……っていうか、何十人も。
私の番は本当にすごくおモテになるようだ。けれど、そんなことはどうでもいい。とにかく、ここは逃げ切らなくてはならない。
今日は大事な人に会うためにお忍びだった。家の馬車は帰してしまったし、帰りも相手に屋敷の近くまで送ってもらう予定だったので、適当に言い訳をして護衛も馬車と共に帰してしまったから頼れる人もいない。
こうなった以上、獣人としての自分の野生の勘に頼るしかない。
とにかく安全に身を隠せる場所を……と、目についた細い路地へと入り。
「!? まずいわ……!」
先が行き止まりになっているのに気が付いて、慌てて元来た大通りへと出ようとするも……ヌッと出てきた見慣れぬ大きな影に阻まれた。
相手の頭の上には人間ではない獣の耳。
逆光でよく分からないが。ぜえはあ、と目の前の大きな影が荒い息を吐くたび肩が上下するのが見える。
薄暗い路地にも段々と目が慣れて、相手の口角が微かに上がるのが分かった。
やがて視認できたのは。
汗を掻いているのが信じられないくらい、人形のようにとてもキレイな顔をした――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――猫獣人の男性、だった。
しまった見つかった――そう思った時には手遅れだった。
向こうも番の存在に気が付き、こちらへ向かって駆けてくるのが分かった。慌てて目を逸らしたが間に合わなかったようだ。
「番が見ているのでさようならっ!!」
大事な人を巻き込むわけにはいかない。失礼にならないようにどうにか挨拶だけ済ませると、私は全速力でその場を後にした。
番が近くにいる――それに気が付いた私は興味本位でそちらに目を向けてしまった。
かなり遠くに相手が居たので安心してしまったのだ。
愛し合う相手がいる者は相手を守るように番の認識範囲が狭くなる――。そんな話を聞いたことがあったから。
その説を話してくれた人を私は心から信頼していたし、何なら役に立ちたいとも思っていた。せっかくまた獣人に産まれたのだから、実験するには都合がいいと思ったのだ。
――あとは、ほんのちょっぴりの好奇心。番を見たくらいでは自分の思いが揺らがない自信もあったので、躊躇する気持ちは無かった。
結果は――……どうなんだろうな、これ?
良い人体実験になると思ったのだが、
「ぜえぜえ、はあはあ……」
息が上がる。前世と違い、走ることが出来る私。とは言っても幼い頃は前世と同じ病に罹っていたし、克服した今も走ることが苦手なのは変わらない。そもそも前世と全く同じ貴族令嬢なのだ。全速力で走る機会などほとんどない。
ああ、もう。何で番になど興味を持ってしまったのか。
あまり人の多いところは得意ではないが、なるべく人ごみに紛れるように逃げ回った。幸い私はあまり背が高くない。障害物に身を隠しながら移動していたお陰で、あまり距離を縮められてはいないようだ。
と、いうか。何度か追いつかれそうになった場面はあったが、そのたびに女性たちが物理的な障害となって助けてくれた。
あまりに遠すぎて顔はよく見えなかったが、前世、私が死んでからリュシーが報告をしてくれた通りなのだろう。キレイなお姉様たち(…といってもスペックと成長に差があるだけで多分私とそんなに年齢差はないと思われる)が、私の番らしき背の高い男性に話しかけて時間を稼いでくれたのだ。
何人も何人も……っていうか、何十人も。
私の番は本当にすごくおモテになるようだ。けれど、そんなことはどうでもいい。とにかく、ここは逃げ切らなくてはならない。
今日は大事な人に会うためにお忍びだった。家の馬車は帰してしまったし、帰りも相手に屋敷の近くまで送ってもらう予定だったので、適当に言い訳をして護衛も馬車と共に帰してしまったから頼れる人もいない。
こうなった以上、獣人としての自分の野生の勘に頼るしかない。
とにかく安全に身を隠せる場所を……と、目についた細い路地へと入り。
「!? まずいわ……!」
先が行き止まりになっているのに気が付いて、慌てて元来た大通りへと出ようとするも……ヌッと出てきた見慣れぬ大きな影に阻まれた。
相手の頭の上には人間ではない獣の耳。
逆光でよく分からないが。ぜえはあ、と目の前の大きな影が荒い息を吐くたび肩が上下するのが見える。
薄暗い路地にも段々と目が慣れて、相手の口角が微かに上がるのが分かった。
やがて視認できたのは。
汗を掻いているのが信じられないくらい、人形のようにとてもキレイな顔をした――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――猫獣人の男性、だった。
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