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29 願い事(ふわふわ耳視点)
しおりを挟む…ひっく………………………………
………………………………
……………………
…………
「ひっく……いいわぁーいいわぁー。ぐすん、ぐっすぅ……女同士の友情とかレアだわぁあ~。お友達の為に流す涙は尊いわぁあ~」
ふと気が付いたらすぐ近くで泣き声がした。……と、言うか普通に話し声もする。
一瞬。リュシーがコチラ側へ来てしまったのかと思ってヒヤリとしたが、思いつめたリュシーは今も目の前に居るし、何より声にあまり悲壮感がない。
……そして、恐る恐るその声の主へと目をやれば。
とても美しい女性がいた。その女性がリュシーと同じように感情のままに泣いている。
キレイなのもリュシーと同じだが、女性の場合はどことなくその美しさに現実味がないというか……。
猫のような……犬のような……鳥のような。
強く逞しい竜人のようであり……弱く儚い人間のようでもある。
不思議と種族を判別するのが難しいというか。
言うなれば全ての種を代表するかのような外見で……。
……それで、分かった。そんな、奇跡的とも言える繊細なバランスで成り立った誰よりも強く儚く美しい存在。そんな存在はこの世界で彼女だけだ。
「女神……様…………」
「ああー、やっぱりアナタ達獣人は話が早いわぁ……ぐすっ…ぐすっ……。…ちょっと待ってねぇぇ、すぐ……すぐに泣き止むからぁ…ぐす……。…んんっ、……よし! 待たせてしまってごめんなさいね、子猫ちゃん。アナタ達獣人の本能ってすごいのね。一目で私を見抜いちゃうし、誰かに教わらなくとも習性や死生観を引き継いじゃうし。そんな本能に縛られた獣人であるアナタ達が、己の半身とも言える運命の番に出会えないなんて……うっ…。ひっく……うう…っ、うわぁぁん! 待って、待ってねぇぇ、すぐ! すぐ、泣き止むからぁ~……」
ひっく、ひっく。
女神様は泣き止んだと思ったらすぐにまた泣き出した。
落ち着きはないが嫌な感じがしないのは、どことなく大好きな親友を思い出させるからだろうか。
それでいて、絶対的に敵わない圧倒的な力の差も感じるのだから、確かに獣の本能というのはすごいものがあるのだろう。
私が病気で命を落としてから今日で49日目。このタイミングで女神様が現れる理由などただ一つだ。そして、こうなった以上、私の願い事はもう決まっている。
女神様が落ち着くのを待って、私は口を開いた。
「……女神様の救済措置を使って、リュシーとリュシーの番を出会わせてもらうことは出来ますか?」
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