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27 リュシーの評価(ふわふわ耳視点)
しおりを挟む「……でも、魔法医の先生は少しだけ見直したわ。まあ、貴女の番があまりにも……だったせいもあるけれど。あのね、お墓の場所を聞いても教えてもらえなくて困っていたら、貴女のご実家に連絡を取って『自分の代理で墓参りをさせるから』って言って、私の代わりに聞きだしてくれたの。通行証みたいなものも用意してくれたわ。判子みたいなのをその場でポンっと押してくれて、『これを見せれば大丈夫だから』って。ほらコレよ。平民は貴族用の場所に入れないって知らなかったから、すごく助かっちゃった。そのお陰で番の観察に多く時間が使えたの。それに、せっかくだから自分の分も本当に墓参りをしてきて欲しいって言われて、このお花も先生がお金を出してくれたの……私一人じゃこんな見事なお花は用意できなかったわ。すごく豪華よね」
それでもあの先生は貴女に相応しくはないけれど……と複雑そうな顔で言いながら、いつの間にか泣き止んでいるリュシー。
良かった……魔法医の先生の話が出てきたから、こっちの声が聞こえちゃったのかと思って焦ったわ。せっかく先生のこと見直してくれたみたいだし、聞こえないとは思うけど、これ以上余計なことを言うのはやめておこう。
リュシーがさっきの話を聞いたら絶対に怒ってしまうもの。
それにしてもその判子って……身分を表すアレじゃないの……。先生ってば、そんな物を気軽にポンポン押したらまずいのでは? 確かに玉璽ほどのものではないけれど、一応我が国ではそれに類する者の……っと、ああ、いえ。これ以上はやめておきましょう、うん。
――ま、先生も人を見る目だけは確かだから平気よね。悪用するような人には絶対に渡さないはず。リュシーもお墓参りの入場券くらいにしか思っていないみたいだし。
……それにしても…………。
前から思っていたけれど、リュシーってば私のことを買いかぶりすぎじゃない? いったい貴女の中でどれだけ私の評価が高いのか……。
「……それに比べて、あの番の酷いこと酷いこと…っ! 良いところなんて無いじゃない! 確かに顔はいいのかもしれないけど、よくもまあ、女をとっかえひっかえ、あんな…に……。…………。……あの……えっと、大丈夫、よね? 本当にアレはきっと顔だけよ? 頭が良くて公平で優しくて美しくて本当に本当に素晴らしい貴女だけれど、男の人を見る目だけは、その……少し変わっているというか……アレだから……」
…………。一体、リュシーの中でどれだけ私の男性を見る目の評価が低いのかしら…………。
でも、リュシーは誤解をしているわ。確かに、少し偏った人を選んでいるように見えるかもしれないけれど、私は貴族。そもそも自由な結婚なんてありえない。
個人の好みなんてものは無関係だし、どうしても政略結婚が基本になる。
だったら、せめて一つでも婚姻相手に突出して優れた点があればそこを評価して……と幼い頃から覚悟をしてきただけなのに。
まあ、こんな体……と言うか、肉体すらも無くなってしまった今は、政略結婚どころか普通の結婚すら無理ではあるのだけれど。
…でも……そうねぇ。確かにそこまで性格悪くて低評価なのに、次から次へ女が寄ってくるなんて。
いったい、どれほど顔がいいのか……とか思うと逆にちょっとだけ興味が湧いて……。
「ゼッタイ駄目よ? アレだったら魔法医の先生の方が、何万倍もマシ……だ…から……っ。…う……っひっく……」
や…やぁね、冗談よ、冗談! …………リュシー?
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