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8 最後の希望
しおりを挟む「……だから、彼女との約束を守るために。私はじっくりと時間をかけて貴方を見極める必要があった。私は『親友の番』を観察していただけで、貴方に特別な感情があった訳ではないわ。……まあ、確かに大事な親友の番がコレなのかという失望や嫌悪する感情はあったけど――ね」
「そん、な……」
俺は運命の番を喪った。
そして唯一この世に残された番のまなざしからも拒絶をされた。
――でも、まだ一つだけ希望はある。
運命の番を喪った混乱からつい偽者に縋ろうとしてしまったが、本当に必要なのは『運命の番』の存在そのものだ。
冷静になって考えれば紛いものになど価値はない。
――大丈夫、俺はまだ若い。
俺の番は体が弱かったようだが、幸い俺は健康だ。だから俺には「次」がある。
今までは番など信じていなかったから鼻で笑っていたけれど、番との婚姻ならば多少の歳の差はよくあることらしい。
今回の番とは縁がなかったが、転生してきた番を捕まえればいい。
俺の運命の番は生きている間に俺に出会えなかった。死んでから、親友だというこの女――番の目だけを持つ偽者が俺を見にやってきただけだ。
つまり、俺の番は番に出会うことが出来なかった可哀想な獣人。この女も言っていた通り、俺の番は次の転生では『女神様の救済措置』が受けられるのだ。
なので、次こそは確実に番と俺は出会うことが出来るはず。
――――なのに。
期待とは違う何かで俺の心臓の鼓動が早くなる。この、落ち着かぬ思いは何なのだろうか。
番の目を持つ女が俺を見る。
更に速くなる鼓動。
――やめろ、見るな。そんな目で俺を見て、諦めさせようとしたって無駄だ。
次がある。俺には次があるんだ。俺は、次こそ絶対に間違えない。
大丈夫、俺は本命の彼女とすら別れたのだから。
見ていたんだろ?
解っているんだよな?
だから、次のチャンスを待てばいい……。
……はず…だ……………………。
「……それで、君は――俺の番には、俺のことをどんな風に報告、したんだ?」
ヒヤリ……。
俺の問いかけに対し、細められる番の目。温度を失くしたそのまなざしに体が震える。
落ち着け、違う、番じゃない。目の前の女は、番じゃ、ない…のに……。
「……ご自分の行動を振り返れば分かるんじゃないですか?」
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……っ!!!!
「……っ!! ち…違うんだ! その……っっ」
番に出会えるとは思わなかったから……。
嬉しいけれど、今の生活が変わるのが怖くて……!
それでも魅かれるのを止められなくて……!!
それなのに出てきてくれないから……っ!!!
「つ…番にヤキモチを焼かせたかっただけなんだっ。そうすれば焦って姿を現してくれると思った! その為に彼女達を利用しただけなんだ!! 感情を揺さぶることで少しでも番の視線を感じたくて――でも、やりすぎたのか俺を見てくれなくなったから慌ててそれまでの彼女達とは手を切って――そうしたら番はまた俺を見てくれたけど、やっぱり姿を現してはくれないから、だから――っ」
「私に言われても困ります」
「だ……っ、だったら番の墓を教えてくれ!! 俺が直接言うから! だから――」
「もう遅いです」
「――は?」
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