【完結】番が見ているのでさようなら

堀 和三盆

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3 番との駆け引きと身辺整理

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 嫌だ、別れたくない、と抵抗する彼女もいたが、ほとんどが素直に受け入れた。
 まあ、俺は獣人だからな。獣人の番への愛情は有名だし、受け入れざるを得ない――というのが実情だろう。

 結構ハデに遊んできたので、番の存在を利用して楽に彼女達と手を切れたのはラッキーだったかもしれない。

 それに、番を言い訳に使っている間に、俺も何となくその気になってきた。


 だって、俺すごくね? 番が現れたからって身辺整理をするとか、すげー真面目じゃん!


 何回も何回も。
 番が見ている――そう言っては女と別れた。


 その度に俺を見てくる視線に陶酔した。
 俺が彼女達に別れを告げるたびに。どこからか食い入るようにコチラを見つめてくる視線。

 安堵に、期待に――憐れみ?

 ああ、コレは俺に捨てられた彼女達に対する感情か?
 なんだよ、俺の番は優しいな。

 相変わらず姿は見えないが、視線のみでも様々な思いが感じられた。


 だけど一向に番の姿が見えないのでいい加減イライラする。


 そんなときは別れ作業をやめて、まだ見ぬ番に彼女とのイチャイチャを見せつけた。怒って出てきてくれるかも――そんな風に思ってのことだったが、そううまくはいかなかった。

 番からの視線が薄れると、再び彼女達との別れ作業を始める俺。

 仕方ないよな。恥ずかしがりなのか、俺の番はちっとも姿を現してくれないし。不誠実かもしれないけど、恋愛には駆け引きが必要だろ?


 ああ、こんなにも充実した日々は初めてだ。
 顔も見ていない番からの視線に、俺は夢中になっていた。




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