【完結】番が見ているのでさようなら

 その視線に気が付いたのはいつ頃のことだっただろう。

 焦がれるような。縋るような。睨みつけるような。
 どこかから注がれる――番からのその視線。


 俺は猫の獣人だ。
 そして、その見た目の良さから獣人だけでなく人間からだってしょっちゅう告白をされる。いわゆるモテモテってやつだ。
 だから女に困ったことはないし、生涯をたった一人に縛られるなんてバカみてえ。そんな風に思っていた。

 なのに。

 ある日、彼女の一人とのデート中にどこからかその視線を向けられた。正直、信じられなかった。急に体中が熱くなり、自分が興奮しているのが分かった。
 しかし、感じるのは常に視線のみ。

 コチラを見るだけで一向に姿を見せない番を無視し、俺は彼女達との逢瀬を楽しんだ――というよりは見せつけた。

 ……そうすることで番からの視線に変化が起きるから。


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