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エピローグ

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 私が定められた期限内に王子妃教育を終えられなければ第一王子殿下と第二王子殿下の間で骨肉の争いが勃発し、国を二分する大騒動不可避とか……。私が条件を守れなかった場合の罰ゲームが重すぎる。
 ……とはいえ、そのようなことにはならないだろう。


 なぜなら、私は人から学ぶ楽しさを知ってしまったから。


 捨てられた妹の教科書を使い一人で勉強していた時と違って、気になったことや行き詰ったことを誰かに教えてもらえるというのは嬉しいものだ。王子様と共に猫になったらそれはそれで幸せかもしれないけれど、この喜びを味わうことが出来なくなってしまうもの。


 勉強もマナーも語学も。とにかくお城で学ばせてもらえるもの全てが新鮮で楽しくて、私はついつい寝食を忘れて没頭してしまう。
 最近では教育係の方々から勉強時間を制限されてしまうほどだ。

 そうやって頑張った甲斐もあり、私は2年という期限を待たずに課された条件をクリアすることができた。

 後は現在王太子教育を受けている第二王子殿下が正式に王太子になるのを待って、第三王子殿下は臣籍降下して伯爵位を賜ることになっている。


 可哀想な女の子と猫だった王子様は結婚してずっと仲良く伯爵家で暮らしました。

 めでたしめでたし。


 ――と、なる予定だったのだが。



 私が勉強を頑張り過ぎた結果、約束の期日を迎える頃には王子妃どころか王太子妃に必要な条件までサクッと満たしてしまい、まだ婚約者のいない第二王子殿下に目を付けられて面倒な事態となってしまった。

 そのせいで、私と王子様が真のハッピーエンドを迎えるのが思っていたよりもずっとずっと先のことになってしまうのだ。

 救いは王妃様の御実家の養女となっていたことで権力バランスを考えて、第二王子殿下との縁談は反対派が多そうなこと。

 王妃様が残念そうなのが少し気になるが――とりあえずゴリ押しされることだけはなさそうだ。名門公爵家だけに養女となることに少し気後れはしていたが、あの時の私、よく決断した!

 やっぱり守られてばかりじゃダメなのだ。結果的に何が自分を助けることになるのか分からない。
 権力バランスやら何やら、王家で学べることはまだまだ多そうだ。


 とはいえ、予定が大幅に狂ってしまった王子様はにゃあにゃあと不満顔。


 ――その分新たなことを勉強する時間ができたから私的にはいいんだけどね!


 ストレスが溜まると王子様は猫になって過度なスキンシップを図ってくるのが、今の私の悩みであり癒しであり……何て言うか判断に困る。


 頑張り過ぎちゃった女の子はヤキモチを焼いた王子様のちょっとしたイタズラに悩まされながら、日々、お城で大好きな勉強をして過ごすのでした。


 おしまい。





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