【完結】虐げられた可哀想な女の子は王子様のキスに気付かない

堀 和三盆

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21 王子様は虐げられた可哀想な女の子を絶対に手放さない

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 その後。

 元々私の母の方が本来の伯爵家の血筋だったのと、母亡き後、婿をとって跡を継ぐはずだった正統な後継者だった私を家族ぐるみで虐げていたことで伯爵家の乗っ取りが疑われ、ラッテ伯爵家の爵位と領地は王家預かりとなった。


 その影響で父は男爵位に降爵。


 妹の方はよほど『不敬罪』や『打ち首』という響きが怖かったのか、伯爵家を飛び出し王家が手出しできない戒律の厳しい修道院へと自ら駆け込んだ。

 そして、そのせいで侯爵令息との婚約を妹の有責で破棄せざるを得なくなり、両親は莫大な慰謝料を請求されることとなった。

 残された父と義母は金策に走り回っているらしいが、このままではせっかくの男爵位も危ないだろう――とのこと。


 父親も妹も馬鹿なことをしたな、と思う。
 変に騒ぎ立てたりせずに、あのまま何もしなければ私という邪魔者を排除できたし、何も失わずに済んだかもしれないのに。

 秘密裏に処理することが決まっていた以上、欲さえかかなければその可能性だって十分にあったのだ。今更だし、同情なんてしないけど。


 私は王妃様のご実家へ養女として入ったことで周囲からの反発も大幅に減り、引き続きお城に住み込んで王子妃教育を受けている。

 2年以内に王子妃教育を終わらせるという約束を果たせば、ゆくゆくは第三王子殿下と共に現在王家預かりとなっている元々の伯爵家を継ぐことになるそうだ


 日々勉強を頑張る中で一つだけ、どうしても気になることがあったので王子様に聞いてみた。


「ねえ、王子様。もしも国王陛下や王妃様から私との結婚を頭ごなしに反対されたらどうするつもりだったの?」

「その時は」

「その時は?」

「王太子殿下と取引をした上で君も猫にしてもらって、猫として番うのも悪くないかなぁ…と思ってた。ってか、それは今も思っている。ほら、君、水浴びするとき僕の毛皮が羨ましいってよく言っていたじゃない?」

「…それは」


 驚いたことに。そもそも王子様の中には私と結婚しないという選択肢はなかったらしい。それにどうやらそれは、私がこのまま期限を守れなかった場合も同様のようだ。

 どうして王太子殿下の策略でかけられた猫の姿になる魔法を解かないのか不思議に思っていたのだが……これでようやくその理由が分かった。

 私と結婚する為なら自分を陥れた第一王子殿下に寝返ることすら厭わないとか……手段を選ばないにもほどがある。


 そんなことになったら第一王子殿下と第二王子殿下が王太子位を巡って衝突し、平和なこの国が荒れてしまう。




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