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9 天国での再会?
しおりを挟む目が覚めると私を取り巻く環境が一変していた。
ふわふわの、まるで雲の上に居るかのような柔らかなベッドに、私の体調を気遣った温かで栄養満点の食事。
身に付けているのは見たことも無いような上等の生地で出来た、穴の開いていないおしゃれなナイトウェア。
あまりの厚遇に自分はあのまま死んでしまったのではないかと思い、『ここは天国なのか』と私の世話をしてくれていた年配の女性に思ったこと、感じたことと一緒にそのまま伝えたら、貴族の御令嬢がこの程度のことでそんな……と大泣きされてしまった。
泣かせてしまったどうしよう…、とオロオロしていると、部屋の外からドタドタと慌ただしい足音が聞こえてきた。
そして。
「ようやくノーラが目覚めたと聞いた! 大丈夫か!?」
そう言いながら、一人の黒髪の見知らぬ男性が息を乱しながら部屋へと飛び込んできた。
その様子に、『女性の部屋へノックもなしに』とか『そんな風にお育てしたつもりはありません』とか、今まで号泣していた年配の女性が即座にお説教を始めたが、それをかわすようにして黒髪の男性が私のいるベッドへと近づいてくる。
今まで見たことも無いような、美しく上品な男性――ではあったのだが。
年配の女性に怒られて。ちょっと潤んだミルク色がかった吸い込まれそうな青い目と、その艶やかな真っ黒い毛並み――もとい、髪には見覚えがあった。
そう、それはまるで――。
「…………王子様?」
私のつぶやきに一瞬目を見開く男性。
男性のその表情に、あの森で出会った黒猫の姿が重なる。
「僕がどんな姿をしていても君は一目で気付いてくれるんだね」
美しい黒髪の男性はそう言うと、そのどこまでも柔らかな青い目を細めてこの上なく嬉しそうに微笑んだ。
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