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3 大雨の中森に置き去りにされました
しおりを挟むただ、森に置き去りまでは一応想定内だった。過去に何度か同じことをされてきたので慣れている。
この森は伯爵邸から少し離れているが、歩いても当日中には帰れるはずだった。義母と妹が伯爵家へと来る前に、生前の母と一緒に領内をくまなく見て回ったことがあるため、大体の土地勘があるのは幸いだったと言える。
ただ、この大雨だけは完全に想定外だった。
長時間雨宿りしていた為、既に辺りは薄暗くなり始めている。夜の移動は危険だし、よく知らない人の馬車に乗るのも危険。
母が生きていた頃は伯爵令嬢としてお茶会などにも顔を出していたし、我が家の詳しい事情を知る悪い人に利用される可能性もゼロではない。
結局のところ、自分の足で歩くのが一番安全なのだ。
そのあたりの危機管理能力も家族から放置されてきたことで自然と備わったものだった。あの家で頼りにできるのは自分自身だけだったから。
こうなった以上は雨が止んで夜が明けて、更に人通りが多くなってからここを出発した方がいい。
どうせ婚約者との顔合わせには間に合わないし、先方も妹に会えばそちらに魅かれるはず。性格はともかく、私の妹は顔とスタイルだけは抜群にいいからだ。
心配しなくても私の不在は義母と妹でうまいこと取り繕ってくれる。元々そのつもりで私を森へ置き去りにしたのだ。あの二人はそういう事が本当にうまいから。
侯爵令息様に特別な感情を抱いているわけでもないし、それで義母と妹の機嫌が良くなるのなら私としては万々歳だ。
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