【完結】親に売られたお飾り令嬢は変態公爵に溺愛される

堀 和三盆

文字の大きさ
上 下
24 / 29
番外編

1 もう一人のフェデルタ

しおりを挟む

 私の名前はフェデルタ。とっても貧乏な伯爵令嬢だ。

 私の家には小さな兄弟がたくさんいて、そんな家族の生活を支える為に私が売られることになってしまった。

 仕方がない。うちの領地はとても狭く、父は才能豊かではあるのだが、あまり商才がないのだ。

 風の噂で聞いた話によると、私のように親から売られてしまった存在はたとえ相手に見初められての御縁だったとしても、飽きられたり少しでも見栄えが悪くなるとポイっと捨てられてしまい、幸せになれないことも多いのだそうだ。

 ――が、私は幸運にも買われて行った先でとても愛され大事にされた……らしい。

 らしい、としか言えないのは私にはその頃の記憶があまりないからだ。

 その間、私も可愛がってくれた誰かを愛していたような気もするし、愛されていたのもなんとなくは覚えているのだが、それがどこの誰かはよく分からない。

 仕方がない。私が私であると意識がハッキリしだしたのはこうして家に戻って来てからなのだ。

 今まで愛されていたらしいけれど、突然実家に帰された今は何もする気が起こらない。

 心にぽっかりと大きな穴が開いてしまったかのような、とてつもない喪失感を覚えるまま何となく実家で無気力に過ごしていたら、いつの間にか私には身の回りの世話をしてくれる侍女が出来ていた。


 おかしいわね。我が家はお父様のせいで家族を売らなければいけないくらいとっても貧乏なのに。


 世話をしてくれる侍女の見た目は悪くない……が、傾国級の美人を見慣れているせいか特別美人といったわけでもなく、容姿はごくごく普通。

 だからかしら。なんとなく親近感を覚えるし、身を任せるにあたっての抵抗感もないから不思議だわ。自分が自分の世話を焼いている……みたいな?

 そんな不思議な侍女は私をお風呂に入れてくれたり。
 食事の世話をしてくれたり。

 甲斐甲斐しく私の面倒を見てくれるものの、侍女はあまり器用ではないのかたまにとんでもないミスをしでかすことがあった。

 ……が、彼女に悪意はない。
 どうやら侍女は体調が悪く、あまり身体が上手く動かせないようだ。

 それでも半年もたつ頃には仕事にも慣れて来て、何でもそつなくこなすようになっていた。初めのころとは動きからして違う。


 ……人間って成長するものなのね。体調が戻ったみたいで良かったわ。



 そして侍女の仕事が上手になるにしたがって、以前にもこんな風に誰かに世話をされていたような気がしてきた。
 ……しかも、もっともっと丁寧に。

 私はほとんど過去を覚えていないのに不思議だわ。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】死の4番隊隊長の花嫁候補に選ばれました~鈍感女は溺愛になかなか気付かない~

白井ライス
恋愛
時は血で血を洗う戦乱の世の中。 国の戦闘部隊“黒炎の龍”に入隊が叶わなかった主人公アイリーン・シュバイツァー。 幼馴染みで喧嘩仲間でもあったショーン・マクレイリーがかの有名な特効部隊でもある4番隊隊長に就任したことを知る。 いよいよ、隣国との戦争が間近に迫ったある日、アイリーンはショーンから決闘を申し込まれる。 これは脳筋女と恋に不器用な魔術師が結ばれるお話。

王太子殿下の想い人が騎士団長だと知った私は、張り切って王太子殿下と婚約することにしました!

奏音 美都
恋愛
 ソリティア男爵令嬢である私、イリアは舞踏会場を離れてバルコニーで涼んでいると、そこに王太子殿下の逢引き現場を目撃してしまいました。  そのお相手は……ロワール騎士団長様でした。  あぁ、なんてことでしょう……  こんな、こんなのって……尊すぎますわ!!

「股ゆる令嬢」の幸せな白い結婚

ウサギテイマーTK
恋愛
公爵令嬢のフェミニム・インテラは、保持する特異能力のために、第一王子のアージノスと婚約していた。だが王子はフェミニムの行動を誤解し、別の少女と付き合うようになり、最終的にフェミニムとの婚約を破棄する。そしてフェミニムを、子どもを作ることが出来ない男性の元へと嫁がせるのである。それが王子とその周囲の者たちの、破滅への序章となることも知らずに。 ※タイトルは下品ですが、R15範囲だと思います。完結保証。

初夜に「私が君を愛することはない」と言われた伯爵令嬢の話

拓海のり
恋愛
伯爵令嬢イヴリンは家の困窮の為、十七歳で十歳年上のキルデア侯爵と結婚した。しかし初夜で「私が君を愛することはない」と言われてしまう。適当な世界観のよくあるお話です。ご都合主義。八千字位の短編です。ざまぁはありません。 他サイトにも投稿します。

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

ヒロインが私の婚約者を攻略しようと狙ってきますが、彼は私を溺愛しているためフラグをことごとく叩き破ります

奏音 美都
恋愛
 ナルノニア公爵の爵士であるライアン様は、幼い頃に契りを交わした私のご婚約者です。整った容姿で、利発で、勇ましくありながらもお優しいライアン様を、私はご婚約者として紹介されたその日から好きになり、ずっとお慕いし、彼の妻として恥ずかしくないよう精進してまいりました。  そんなライアン様に大切にされ、お隣を歩き、会話を交わす幸せに満ちた日々。  それが、転入生の登場により、嵐の予感がしたのでした。

お飾り妻宣言した氷壁の侯爵様が、猫の前でドロドロに溶けて私への愛を囁いてきます~癒されるとあなたが吸ってるその猫、呪いで変身した私です~

めぐめぐ
恋愛
貧乏伯爵令嬢レヴィア・ディファーレは、暗闇にいると猫になってしまう呪いをもっていた。呪いのせいで結婚もせず、修道院に入ろうと考えていた矢先、とある貴族の言いがかりによって、借金のカタに嫁がされそうになる。 そんな彼女を救ったのは、アイルバルトの氷壁侯爵と呼ばれるセイリス。借金とディファーレ家への援助と引き換えに結婚を申し込まれたレヴィアは、背に腹は代えられないとセイリスの元に嫁ぐことになった。 しかし嫁いできたレヴィアを迎えたのは、セイリスの【お飾り妻】宣言だった。 表情が変わらず何を考えているのか分からない夫に恐怖を抱きながらも、恵まれた今の環境を享受するレヴィア。 あるとき、ひょんなことから猫になってしまったレヴィアは、好奇心からセイリスの執務室を覗き、彼に見つかってしまう。 しかし彼は満面の笑みを浮かべながら、レヴィア(猫)を部屋に迎える。 さらにレヴィア(猫)の前で、レヴィア(人間)を褒めたり、照れた様子を見せたりして―― ※土日は二話ずつ更新 ※多分五万字ぐらいになりそう。 ※貴族とか呪いとか設定とか色々ゆるゆるです。ツッコミは心の中で(笑) ※作者は猫を飼ったことないのでその辺の情報もゆるゆるです。 ※頭からっぽ推奨。ごゆるりとお楽しみください。

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

処理中です...