【完結】王子に魅了をかけたらキャー♡と言って逃げられた

堀 和三盆

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2 第二王子に魅了をかけたらキャー♡と言って逃げられた

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「ちょ……っ、待って!」
「キャ――――――♡」

「待って!! お願い…っ」
「キャ――――――♡」


 追いかけても追いかけても顔を隠して逃げていく第二王子殿下。息切れ一つしていない。足も速い。流石は文武両道と言われているだけあってかなり身体能力が高いようだ。魔力以外は特筆すべきことのない私はちっとも追いつけない。

 日頃マナーをきっちりと守り、規律正しく動く第二王子がキャーキャー♡ 言いながら走っちゃいけない廊下を縦横無尽に駆けていく。

 メイドや下働き、通りすがりの役人までもが信じられないものを見たかのように礼をとるのも忘れ見送っていた。

 いや、信じられないのは分かるけど誰か止めてよ!!


「ぜえぜえっ、はあはあ……」
 ……チラッ……チラッ……


 私が息切れして立ち止まるたびに、第二王子殿下は私と一定の距離を保ちつつ、肉眼で視認できるギリギリの範囲で、物陰から私に熱視線を送ってくる。

 その、頑張って追いかければ届きそうで届かない微妙な距離の取り方が腹立たしくて仕方がない。いい加減に走り疲れた。あと、表情もギリ見える範囲なので滲み出る好き好きオーラがうっとうしくて、言いたいことがあるならとっとと言えよ、って気分になってくる。精神的にも疲れた。

 睨みを利かせると「キャッ♡」と言って物陰に引っ込む。目が合っちゃったぁ♡――とのささやきを拾ってしまう自分の無駄に性能の良い耳がつらい。


 自分で魅了魔法をかけておいてなんだけど、とっとと解かないと精神的にも肉体的にも身が持たない。


 その思いから数日間、王宮内で全力の追いかけっこを続けたんだけど――。


「あー、王国認定魔女殿。第二王子殿下が魅了魔法にかけられていると噂になっているのだがどういうことだろうか」


 宰相様に話しかけられてようやく気が付いた。精神的、肉体的にだけではなく、社会的にもまずいことになっている――と。




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